時を経た変化

「陛下・・・いつになったら私は軍に戻れるのでしょうか?」
「なら逆に聞くが、軍に早く戻りたい理由でもあるのか?」
「いえ、それは・・・ただ早く戻りたいと言うより、研究職にいつまでも就いているのは立場的にどうかと思ったからこう申し上げているのです」
「・・・ふむ・・・」
・・・二年半程前のピオニーの私室にて、来訪をしてきたジェイドから分かりやすく研究職にいつまでも置くなとばかりの不満が感じられる言葉に少し考え込む様子を見せる。
「・・・なら言い方を変えよう。研究職が嫌かそうでないか、ハッキリどっちか濁さず言え」
「・・・それは・・・」
「長いこと付き合いがあるからお前のことはある程度は分かる。どちらかと言えば軍に戻りたいと言うよりは、研究職にばかりあまり長く就きたくないと言うのがあるんだろう・・・昔の事を時折でも思い出しかねない事からな」
「っ・・・」
そうしてピオニーが口にした言葉達を受けると、ジェイドは少し表情を苦い物へと変えた・・・ピオニーが意味深に口にした昔とはフォミクリー技術の事を指していると理解した上で、ジェイド自身消したい過去の一つであり軍属の人間として活動する理由の一つであることは間違ってなかったが為に。
「そういった気持ちがあることを批難するつもりはない。事実あまり気持ち良くないだというのは分かるつもりでいるし、そういった考えに時々でもなることから心地よくない・・・だから研究職から離れたいんだろう」
「それが分かるのでしたら「だが俺は当分の間それを覆すつもりはない」っ・・・!」
ピオニーは気持ちは理解出来ると言いすぐにジェイドはならと言いかけるが、そうはしないと至って冷静に言葉を遮る。
「お前も頭では分かっているだろうが、現状で重要なのは和平締結以降特にキムラスカと小競り合いも無くなったことから軍備に力を割くことではなく、国内の安定に努める事の方だ。それはマルクト側だけでなくキムラスカにダアトも似たような立場にあるのは分かるだろうが、その中でも取り分け急務と言うより必要と見られているのは譜業に関する問題・・・それを解決するためには優秀な技術者が欲しいところだが、だからと言ってそんな存在がポンポンと現れる筈もない」
「だから私がかつて技術者といったように動いていた経歴に能力があることから、そうした方がいいという話になる・・・というのは確かに理屈としては理解は出来ます。ですが今私が言っているよう、私はあまり研究職にはそこまでいたくはないのですが・・・」
「なら軍から身を引けばいい。それで終わる話だ」
「なっ・・・!?」
ピオニーはそこからマルクトの内情に自分の考えを口にして、ジェイドは理解はしても気持ちはと訴えかけるが・・・まさかの辞めていいとの答えがあっさり返ってきたことに絶句した様子を見せた。
「驚いているようだが、仕事を続けたいと思うかに辞めるかどうかを決める権利はお前自身にある。勿論俺としてはお前にこれからも活動してもらいたいと思っているが、あくまでそれを決めるのはお前自身だ。仕事やその指針に不満があると言っていて俺という上司と折り合わんのに、それで俺が無理を承知でそう言ってほしいとお前は思っているのか?」
「い、いえ・・・ですが、何故いきなりそんな考えに・・・?」
「・・・ふぅ・・・」
そんな様子にむしろそう勧告するのが普通だというように言うがやはりそうピオニーに言われること自体が信じられないといったジェイドに、少し疲れたように目を閉じてタメ息を吐いて息を整える。









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