軍師と女忍、総合する

「・・・まぁちょっと言い過ぎたかなとは思うけど、取り敢えず明日は協力してもらってもいい?その分の報酬は出せないけどさ」
「・・・いいえ、協力はします。こうして貴女に私の計画や心の甘さを指摘されたことは教訓になりました。ティアのことは致し方ない物として承知していますので、せめて最後には貴殿方に協力します。それに、協力しないとなるなら必然的に私はモースに協力するようなことになります。この期に及んで奴に協力するようなことになるのは私の本意ではないですし、万が一私とモースが生き残るような状態になってしまうと考えれば尚更です。もう奴のお守りなどしたくはありませんからね」
「まぁ謡将がそれ以降に生きることを考えると、大詠師の忠実な部下に今度こそなるってくらいじゃないと色々と無理だろうしね~。ま、取り敢えず協力してくれるってことで旦那様には話はしておくね~」
「えぇ、それで構いません」
そうしてくのいちは一応の謝罪をした後に協力について話を進め、モースに協力したくないからというのも併せて協力をするとヴァンはすっきりした表情で頷く。
「まぁそう言ってくれることはありがたく思うけど、一応の対策としてもし途中で今の話を反故にするようなことをしたら途中ででも私が始末しますからね~」
「・・・それは当然でしょうね。そもそも私を信用出来ないからこそ私を処刑することにしたのですからね」
「その辺りは注意してもらえればありがたいけど、後は何かある~?もう何もないなら旦那様に報告に戻りますけど~」
「・・・では一つ、先程は報酬はいらないといったように言いましたが頼みを聞いてはいただけませんか?」
「頼み?」
ただちゃんと裏切りに対しては保険はかけるといったくのいちに若干苦笑するヴァンだが、戻る前に何かあるかと聞かれて神妙に頼みがあると口にする。
「・・・貴女方からすればティアに関しての不安要素が増えることから気乗りはしないでしょうが、私の処刑後に私の言葉をティアに伝えてはいただけませんか?・・・私のことで思い詰めるような行動をさせてしまって済まなかった、残りの余生はお前は望まぬだろうがせめて静かに生きてほしい・・・と」
「・・・旦那様には謡将がこう言ってたって一応は言うし伝えるように動いてはくれるだろうけど、ならティアの望みも聞くとはしないけどそれでいいなら伝えるよ?どうせって言い方になるけど、ティアが求めるのって神託の盾に戻って兄さんの贖罪の分も含めて役に立ちたいって言葉だろうけど、いつ死ぬかも分からないって人を重用なんて出来ないしとても人の上に立つ器じゃないからね」
「十分です・・・ただもしもその処置に不服を申し立て、諦めを見せないようであれば・・・その時は諦めざるを得ないような状況にしてください・・・どうせ私はその時には生きていませんし後の対応は貴女方に任せるしかありませんが、下手に私が情けをかけてほしいといった言葉に引きずられるようなことになるのはよろしくはないでしょうからね」
「・・・まぁそれは伝えてはおくね。じゃあ私はこれで」
「えぇ、ではまた明日」
そうしてヴァンから出てきた頼みの中身もそうだが以降の対応についても聞かされたくのいちは表情を引き締めて頷いた後、もう行くと告げて背に声を受けながら牢を後にしていく。諦めの伴われたような寂しそうな笑顔を受けているその顔を見ることのないように。









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