軍師と女忍、総合する

「・・・まぁそれはともかくティアを説得したとして、どんな風に謡将はその世界でティアに生きていて欲しかったの?」
「どう、とは?」
「百歩譲ってティアが謡将の言う通りにすると決めたとして、その世界で生きる生き方なんてかなり限られてくるでしょ。特に謡将の計画に準じた上でそこに沿って生きるって言うんなら、造り出したレプリカ達を被験者側として支配して育てるってくらいしかやることはない・・・そうして被験者としてレプリカを見下すような生活をするのは被験者として正しいみたいな考えになるのは当然だって謡将は思うかもしれないけど、被験者という立場の人間はそれこそ精々謡将達に降伏するしかなかったユリアシティの人達ばかり・・・そうなると謡将が気にかけているってのもあってティアの立場って言うのは数少ない被験者の中でも特別な位置にある者だって思われるだろうけど、それってよく言えば高嶺の花になって悪く言えば決して逆らってはいけないし手を出してはいけない人物って風になる。そんな状況の中で、謡将はティアに被験者の姫みたいな扱いをされて幸福感を得てほしいって思ったの?」
「なっ・・・!?」
ただそんな話題を変えてティアに計画が成就したならどうなってほしかったのかと聞くくのいちが詳細に話す中身に、ヴァンはたまらず絶句してしまった。くのいちから話される話の中身が現実味を帯びていることもそうだが、どちらかと言えば・・・
「あ~、その反応を見ると分かっちゃうな~。事を無事に為してそこにティアがいてどうなってほしかったのかもだけど、自分達も含めてどういった風になるべきだったのかを深く考えてなかったのかをね」
「・・・自分達もなどと、そんな・・・」
「全く何も考えてなかった訳じゃないのはリグレット達から話を聞いてるからそれは知ってるよ?でもね、私もそうだけど旦那様もその話を聞いて思ったことがあるんだ。それは・・・謡将は預言に詠まれたような未来を変えてレプリカをその世界の文字通り代替え品にして作り替えるって目標はあっても、そこから先に何がしたいかだとかそこでどんな風になりたいかなんて事を見据えてないって」
「っ!!」
続いたくのいちの言葉にヴァンは反論をしようとしたが、そんなヴァンの無意識な部分を突いた言葉に大きく表情を驚愕に揺らした・・・そう、ヴァンが感じたのは定まった目的以外の部分を考えていないと突き付けられたという所だ。
「大きな目的を持っているから邁進するだけ、犠牲が出ようともそれを厭うことはない・・・まぁ他にも色々と言い方だったりはあるだろうし、謡将達のその覚悟が強いことについては今までの事からよく知ってはいるよ?けどね、謡将・・・言い方は悪いけど、大義名分だったり大言壮語を語って自己陶酔してる人って大抵その言葉や考えの先もそうだけど、そこで起きる大きな結果に付随することについてを考えてないんだよ。今の謡将のようにね」
「・・・それは分かりますが、何故いきなりそのようなことを私に・・・?」
「いや~、ちょいと最後だし個人的に言っておいた方がいいかなって。謡将は自分の行動が全部うまく行くみたいな風に考えてたけど、こんな風なことも考えるべきだったってね」
「・・・耳が痛いですね、そう聞くと・・・」
くのいちはそんな部分についてを厳しく、しかしあくまで口調だけは気楽そうに口にし、ヴァンはたまらずその中身に沈痛な表情を浮かべた。何も考えていないことを突き付けられ、話の中身を否定出来ずに受け入れるしかなかったために。









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