軍師、暗躍と飛躍

「・・・お前の言い分は分かった。確かにお前がダアトを出てルークの捜索に行ったと聞いたことでキムラスカ側からの追求も収まった事だからな。ただ何故お前がダアトを出たのかと思っていたが・・・」
「やむを得ない状況にあったからです。ティア=グランツがあのようなことを起こさなければ私に詠師の方々も頭を悩ませず、ましてやダアトから出ることもなく済みました」
「ティア、か・・・そうだな、確かに元々を言えばあの女が元凶だったか・・・くそっ、二年前からそうだが私を煩わせおって!忌々しい・・・!」
モースはそこからキムラスカにいた時の事を話し孔明にティアに全ての責があると返されると、沸々と怒りを思い出したように溢れさせる。二年前という単語を用いて。
「・・・現在、ティア=グランツは謡将と共にゴールドバーグ将軍にその身を引き渡しました。謡将はまだ擁護のしようはあるでしょうが、このまま行けばティア=グランツはキムラスカに引き渡す事になるでしょう。そうなればキムラスカの溜飲も少しは収まるでしょうが、反面ユリアの血族が一人減ることになるのはまず避けられない事になります・・・どうされますか?ティア=グランツを擁護する気はありますか、大詠師?」
「・・・確かに貴重なユリアの血族がいなくなる事に関して、惜しいと思う気持ちは無いわけではない。だがこのような前代未聞の事件を起こされては、最早あの女を助けねばならん理由など無くなった!それに子孫を増やすだけならヴァンがいればいい!奴にこだわる理由などない!私は奴の擁護などせん!それともお前は反対でもするというのか!?」
「いいえ、そのようなつもりはありません。むしろ我々も多大な迷惑を被った身でもありますが、何より神託の盾として居続けさせるにはあまりにも大きな失態を犯しました。もし大詠師が彼女の処分に難色を示しましたら、こればかりはいかに大詠師と言えども反対をさせていただくつもりでした」
「・・・お前が私に歯向かってまでとは・・・まぁあの女がしでかした事を考えれば、当然の事と言えるだろうな」
二年前という単語には触れずティアの処分についてを聞くとモースはまた一気に怒りを爆発させ反対する気かと逆に聞いてくるが、むしろそうしないなら意志を通すつもりだったと珍しく孔明が我を通す予定だったと言い切る様子に珍しいと言いつつも頷く。
「・・・ちなみに聞くがコーメイ、お前はバチカルにしばらくいるのか?」
「・・・いえ、大詠師が何もないというのであればすぐにダアトに戻るつもりですが・・・私に何かご用ですか?」
「いや、お前がここに残るというのであればあの女の処分はお前が担当しろと言うところだったが、ダアトに戻るなら私がそうする。本来ならそれを済ませてから行けと言いたかった所だが、お前にはダアトを出ていった分の仕事をやってもらわねばならんからな」
「そういうことですか・・・(大方残るというのであればティアの事も含めて些事を私に押し付けようとでも考えていたのでしょうね。ただダアトでの役割があるからそれらを私に再び押し付けようとしているといった所でしょうが・・・生憎ですね。貴方がダアトに戻るだろう頃には、もう既に貴方の居場所はありません)」
それでふと少し考え込むような素振りを見せた後にモースは孔明にその後の行動を問うが、その返答に大詠師らしい威厳を伴わせたように命令する・・・だが快く了承して頭を下げる孔明がモースにとって、非情な事を考えていることなど知るよしもなかった。













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