軍師と女忍、総合する

「・・・ローレライ、どういうことだ?体の不調はないとは言ったが・・・」
『・・・我は慎重に体に異常がないよう、音素を補填した。その上で失敗はなかったと見ているが、あの様子では体に不調が起きたというよりは心に変化が起きたのではないかと思う。音素を補填したことにより、何か体に起きた変化を受けてな』
「変化、だと?」
『我自身フォミクリー技術に関しては詳しくはないが、フォミクリー技術により身体情報を抜き取られたことによりなんらかの影響が肉体的にもだが精神的にも及ぼしたのではと思うが・・・そこのところはどうだ、ディスト?』
「・・・可能性は全く無いとは言い切れませんね。元々フォミクリー技術で身体情報を抜き取る際に命を落とすことも可能性として有り得ないことではありませんから、精神に何らかの影響を及ぼすことも否定は出来ません。ただそうなると私の推測ではありますが、ローレライの言う通り悪い影響ではないとは思いますね」
「何・・・?」
・・・それでアッシュのいなくなった場でインゴベルトがローレライに説明を求めるが、話の中で話題を振られたディストが返した予測に他の面々も怪訝そうな表情を浮かべる。
「単純な例えとして抜かれた身体情報を体のどこでもいいので想像していただいて、そこの部分が欠損した状態で且つその傷口が塞がらずにずっと痛いままだと考えてみてください・・・そんな生活をずっとしていけば痛みに顔をしかめ続けるような気分になるのと同時に、痛いという状態にもある程度は慣れてはくるでしょうし、もうそういうものだとの諦めもつきたくはないでしょうがつくでしょう・・・その点であの方は七年近くもの時をそうして過ごしてきた訳ですが、先程のローレライによりその欠損した部分は補われて痛みも嘘のように引いてしまった・・・そう考えたなら、どういった心理状態になると思いますか?」
「・・・あの方の状況に限って言うなら治すことなど最初から考えてもいなかった痛みが降って湧いた形で無くなったことに、戸惑いを覚えたのだと貴方は考えているのですね?」
「えぇ、丞相の言われる通りです。確かにあの方は自分の事をどうにか治したいといった気持ちや考えなど全く無かったでしょうし、事実もし何か妙な事が起きて死なないならいいといった程度に先程はただ構えていたことでしょう・・・ですがそうして失われた身体情報が戻ってきたことにより何らかの影響があの方の中にあったのでしょうが、それが不快感があるどころかむしろ悪くないものだったことが、あの方からしたなら意外であると同時に戸惑いを覚えたのだと思われます。全く期待も何もしていなかったことが、自身に強く良き影響を及ぼしたことが」
「成程・・・だからこそ戸惑いを覚え、どういったように自身で言い表せばいいかわからずになっていたということか」
ディストはそんな視線に例えを交えた上で話を進めて孔明からの声もまとめると、インゴベルトも周りもそういうことかと納得する。アッシュ自身の戸惑いはこういうことなんだと。
「ただあくまで今のは私の推測に過ぎませんが、このバチカルにはまたグランコクマ同様に体裁の為とはいえもう一度訪れる段取りになっていますので、その時に何か異変があの方から感じられたなら丞相にお伝えしてください。丞相の判断にもよりますが、こちらに再び参りたいと思います」
「そう言ってくれるのはありがたいが、大丈夫か?丞相」
「はい。こちらとしてもあまりあの方の容態が芳しくない事態になるのは望ましくありませんので」
「うむ、礼を言おう」
そんなインゴベルトに推測だと言いつつ許可次第で自分が動くつもりでいると言うディストにインゴベルトが孔明に確認を取ると、すぐさまにいいと返したことに軽く頭を下げる。









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