軍師と女忍、核心へ

「・・・しかしまぁ、問題が大方解決したかと思えばまた次から次へと・・・こういった話を聞くと表向きはともかくとしても、アッシュが王座についてからのキムラスカとの国交はあまりしたくはなくなるな」
「そちらに関しては然程問題ではないと思われます。アッシュが王座についたとしてもインゴベルト陛下に公爵が生きている内は余程のことは起きないようにと動かれるでしょうし、使者を出すにも大佐など知り合いを出さないなら流石に会ってすぐ怒鳴り付けるなどと言ったことはしないでしょうし、手紙なども問題となるような文言は書いてはこないでしょうが・・・何よりアッシュ自身としても戦争にはしたくないと思いはしても、だからと言って我々と積極的に交流したいとは思ってないでしょうからね」
「成程、こちらから一歩距離を取るまでもなくあちらから勝手に取ってくるであろうから然程心配はいらないというところか」
「そういうことです」
ピオニーはそんなアッシュの話題にこれからの国交について気が重いといったように漏らすが、孔明が口にしたこれからのキムラスカの国交のやり方について聞いて納得をする。アッシュなら積極的な外交を自らの気持ちからしてくることはないだろうということに。
「我々の事に関してを今更彼が好意的に思ってくれるようになるということは確かにないでしょう。ならばこそ彼の負担にならないようにするのも当然ですが、同時にキムラスカが苦境に陥ったとしてもその距離感を出来る限りは保ちたいと私は思っています。都合のいい時にだけすり寄られて好意的にといった態度を取られても、こちらとしてもあまり心地よくはありませんからね」
「まぁそれは道理だが、そういうことを平然と俺に言うということはマルクトとは好意的に付き合いたいということか?」
「そのような考えもありますが、ローレライを見送って以降のダアトは勢力としての影響を大きく落とすことは避けられません。それに預言というローレライ教団の核を為していた物が無くなる我々が、マルクトにお返し出来るような利を与えることが出来るかどうかは保証は出来ませんからね」
「・・・言いたいことは分かるが、随分と正直に話をするもんだな丞相。流石にそこまで言ってしまうと、これからのダアトには不安しかありませんと言っているような物だぞ?」
それで会話を続けていく二人だが、ピオニーは声色を低くして圧力を込めた問い掛けを向ける。そんな馬鹿正直にこれからの自分達に不安があると示すなど、攻め落としてくださいといわんばかりの弱味をこれから次第で敵にもなり得る国の国主に平気で言うのはどういうことかと。
「はい。事実、不安要素ばかりですのでこのように申し上げています」
「っ・・・」
だが孔明が躊躇せずに微笑を浮かべて肯定をしてきたことに、ピオニーはそっと小さく息を飲んだ。まさかそう来るとは思っていなかった為に。
「ですがマルクトからしてもキムラスカからしても、ダアトを攻め落として得られる利などほとんどないばかりかむしろ不利な事ばかりです。その理由の大半に上がるのは、ダアトに住んでいる住民は基本的に戦争に巻き込まれることがなく過ごしてきた人々ばかりで侵略に対して不慣れであることに、ダアトという不可侵だった場を他国の人間に踏み荒らされる事を嫌い抵抗や抗議をしてくるであろうことです。おそらく侵略に成功しても数年単位でも人々の反感は収まらないでしょうね」
「・・・確かに預言が詠まれなくなったから侵略をしたと見られたなら、侵略した側への反感は大きくなるだろうな。ダアトという場の特異性を考えれば決して有り得ない話ではない、か」
続けて孔明がダアトを攻め落としてもメリットはないと告げた上でのその中身に、ピオニーも苦々しく納得する・・・預言脱却を将来的には行うつもりでいるとはいえ、ローレライ教団の本拠地であるダアトを余程の理由なしで攻め落とそうとしたなら、今まで教団や預言の恩恵を受けてきた人々の反感を大いに食らうだろうことは確かだというように考え。










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