軍師と女忍、核心へ

『元々ユリアが預言を詠んだのは今のオールドラントのほとんどの者に思われているような世界の繁栄を詠んだ為ではない。むしろ世界の終わりを避けるために詠んだのだ』
「世界の終わり、ですか・・・まぁそうでしょうね。そうでなければあれを残す理由はないどころか、預言通りになればオールドラントが滅びるというならそれを避けるために詠んだというのが妥当でしょう・・・ですがそれが何らかの理由から預言は世界の終わりを詠んだ物ではなく、世界の繁栄が詠まれた物でありそうするべきものであるという認識になったということですか」
『理解が早くて助かる・・・と言うよりはそもそもを言うなら教団を作った祖であるフランシス=ダアトがユリアを長い間監禁し、預言が世界の終わりが詠まれた物ではなく世界の繁栄が詠まれた物だというように認識していったのが始まりなのだ』
「フランシスが、ですか・・・」
そうして孔明とローレライは会話を繰り返していく中、そこで出てきたフランシスという名に孔明は反応する・・・フランシス=ダアトはその名字にあるよう、ダアトの創設者でありローレライ教団の創設者でもある教団の人間にとっては避けては通れない人物の名前に。
『一時期彼はユリアと預言についてを利用しようとしていた・・・自らの思惑の為に。だがユリアからの言葉もそうだが預言が何もせずとも預言通りの結果になることを受けて、次第に彼は預言を恐れると共に預言通りにするべきだというように広めていったことを後悔していった・・・そうして数年後には彼は自らの元からユリアを解放したのだが、もうその時には預言通りにすることを止めにしようと言っても最早止めようもない領域にあったことに、ユリアをいいように利用しようとしてその言葉に耳を貸さなかった事を後悔する形でだ』
「・・・その時にはもう既に預言がこういうものだと広まっていることに、自分がそう広めたことから下手に何か言っても信じられないばかりか、預言を独占するつもりかと言われることに人々からの反感を買いかねない領域に来かねなかったからといった辺りですか」
『あぁ・・・現にフランシスはユリアを自らの元から解き放った後、自害を選んだ。自らがやったことを悔いる形でだ』
「成程・・・史書には自害とも自害に見せかけた他殺とも分からないと書かれていましたが、そういうことであれば自害をしたとしても遺書の類いを残せなかったからハッキリとはフランシスは事実を書けなかったということになりますね。フランシスからすれば遺書を残して真実を書き記しても嘘だと談じられるだろうことはまず間違いないどころか、むしろ謀だといったように見られてその遺書は確実に燃やされるなどして痕跡一つも残さず消されていたでしょう。まぁ今言ったようにフランシスが遺書を残していたとしても勝手に処分された可能性は有り得るでしょうね」
『・・・つまり遺書を残していてもそうでなくとも、結果に大差は無かったということか・・・』
「話を聞く限りではフランシスは決して暗愚な方ではないという印象を受けました。おそらく預言について書き記さずに単なる遺書を残しても良くない事態になりかねないと思い、敢えて書かなかったのでしょうね」
『むぅ・・・』
そこからフランシスについてを当時の目線と現在からの予測という形で話をする二人だが、孔明がこういう理由で遺書を残さなかったというか残せなかったのだろうと口にした中身にローレライは複雑さを滲ませた声を漏らす。フランシスとしても最早どうしようもなかったのだと、孔明の言葉から改めて認識して。










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