軍師と女忍、核心へ

「まぁアッシュに関してはあの様子なのは見ていて分かったが、キムラスカのこれからはどうなると思う?今までの様子から見てだ」
「そうですね・・・一先ずは問題はないでしょう。一応は対策はしましたし、もしもの為の策もインゴベルト陛下には授けています。アッシュの手綱に関しては数年単位では外れることはないでしょうし、ナタリア様との子どもが出来ればそれもまた枷となるでしょう。キムラスカから離れたくても離れることが出来ず、どうにも身動きが出来なくなる形でです」
「ま、その辺りは向こうもちゃんとやるだろうな。折角縛り付ける事が出来るいいきっかけをみすみす見逃すわけにもいかんだろうしな」
そうして二人は会話を続けていきピオニーは笑みを浮かべるのだが、そこで孔明の横に出るようディストが前に出てきた。
「お話中に失礼しますがピオニー陛下・・・そろそろ陛下も結婚か後宮を作るなりして、次代の為に動かれるべきですよ」
「ディスト・・・」
「昔馴染みとしてもありますし伝え聞くような話もありますが、もう他人事ではないからこのように申し上げているのです・・・キムラスカの次代に関しては丞相が言われたようになるでしょうが、マルクトもまた他人事で済ませられる程に状況がいいという訳ではないでしょう?」
「・・・まぁな。このマルクトにはもう俺以外にマルクトの皇族の血を引くものはいない。そう考えれば俺が死ねばマルクトの皇族の血は途絶えることになるが、今まで俺はその事を考えないよう、遠ざけるようにしてきた・・・だがもうそれも終わりにしなきゃならんのだろうな・・・」
「「「「・・・」」」」
そのディストが静かながらも確かに強い視線で意を求める様子に、ピオニーも観念したように力ない笑みを浮かべながら口にした言葉に周りにいる面々も真剣にその言葉を受け止めていた。



(まぁピオニー陛下の育った環境に皇帝になった経緯を考えると、心に傷を負ってないとは言いきれないんだよな~・・・ケテルブルクで大佐の妹に恋をしたけど結ばれることがなかったってことに関してはともかく、皇族同士の殺しあいがあった事実から皇帝になるしかなかったんだし・・・)
その中でくのいちは仕方無いと内心で思う。普段は飄々としていて掴み所などないといったように振る舞うピオニーだが、その内心が表面上の姿と同じものと限った訳ではないだろうと。









・・・ディストからピオニーの昔話を聞いたことのあるくのいちだが、ケテルブルク時代のジェイドの妹への想いが実らなかったことに関しては多少は心にのし掛かっていても、実はそこまで重くはなかったと見ている。他に大きな事件があってそれが影響している分もあってもだ。

実はピオニーの中で結婚をしないという気持ちになっている考えの中で大きくウェイトを占めているのは、かつてマルクトで起きた皇族同士の殺しあいである。

詳細に関しては又聞き話である上にあまり人聞きのよくない話だから公然の秘密のような形でマルクトでも語られることは少ないが、ケテルブルクに軟禁及び隔離の為にグランコクマから追い出されていたピオニーを尻目に当時の皇族達は自分達が次代の皇帝だとその椅子を巡って争い・・・結果として誰一人その中の人物は生き残った者はおらず、遠く離れていたケテルブルクにいた幼いピオニーが唯一の皇族の生き残りだったが為に次代の皇帝となった・・・という事は簡単に調べがついた。

この事は規模はともかくとしても、似たようなことはくのいちや孔明達も話は聞いたことはある。というより実際孔明の場合は敵国の相手の二代目の君主を決める際、そのような跡目は誰かといった論争があったのだ。結果としては長男が妥当にその後を継ぐという形になったが、一歩間違えれば身内同士の争いで敵国内が混乱していた可能性も大いに有り得たと孔明はくのいちに当時を思い返しながら話をしていた。

・・・身内同士の骨肉の争いは、国の上層部の間で起こることは決して珍しいことではない。しかしそこに巻き込まれた者達が心身共に問題ない状態でいられるかに関しては別物である。









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