軍師、暗躍と飛躍

「・・・成程、謡将はそういった行動を取っていたのですか。ある意味彼らしいと言えば彼らしいですが、妹の事に関して甘すぎますね・・・事が進めばいずれそんなこと関係無くなるとでも思っての事でしょうが、そういったことが妹の為になるはずがないでしょうに・・・」
「元々彼が動く事を決めた動機は大義の為と言うより、どちらかと言うと個人的な物ですからね。彼は配下の神託の盾の前では大義と言ったように振る舞っているようですが、その行動の本質はあくまで自分の本懐を遂げるための物・・・だからこそ表向き良識的に振る舞うその傍ら、自身の気持ちを押さえる事は出来ないのでしょう。心許せる身内を不遇の目に合わせたくないと・・・まぁだからと言って彼女の為にならないのは否定しませんけれどね」
「擁護かと思いきやそういうことを言うあたりは丞相らしいですね」
・・・それで今までの経緯を話終えるとディストはヴァンの認識についてを批判するように言うと、理解しているといった中身からの同意を示す孔明に単にらしいと返す。
「ですが丞相はそれで済ませようと言うお気持ちは当然、ありませんよね?」
「えぇ、当然です。度々リグレットには申し訳ないという気持ちはありますが、それでも彼女を擁護する理由にはなりません。むしろ謡将のようなことをしてしまえば彼女を調子づかせてしまうでしょう・・・少しの間だけしか共に旅をしていませんが、彼女の性格及び考え方は把握しました。まず彼女は基本的に自分の取った行動とその結果の規模についてを全く理解しておらず、あくまで自分の中だけの事と思っている・・・だから自分は大した事はしていないと感じている。周りはそう思っていないという事に気付けないし気付こうとも思わず」
「そのくせ、自分の思う偉い立場の人物に対しての線引きは厳しく・・・そしてその線引きから下にいる人物に対しての態度を変えることはない、ですか」
「えぇ、そうです。真実はどうあれルークの立場はキムラスカの重鎮であるファブレの子息という身分で、親が偉いのは知っていても子どもまではそうではない・・・だから口調も態度も高圧的で構わない、などといった理論は通用しません。ですが彼女はそれが当然とばかりの態度をルークに取っている、いくら見た目の年齢にそぐわないような振る舞いをしていると言ってもです・・・正直な気持ちとして申し上げるなら、何故リグレットの教鞭を受けてあぁいった立ち振舞いになるのか理解出来ませんね。私は」
「・・・まぁリグレットの擁護として言わせていただくなら、その師弟関係は二年前にもう途切れていますからね。そこから先の経過に関してはリグレットの指導不足ではなく、あくまで彼女自身の責任ですよ。例え兄の事実に関してを差し引いたとしてもです」
「それくらいは私も分かっていますよ。リグレットには責任はないということは」
それでティアの処遇について確信を持った問い掛けをするディストに孔明も肯定を返すが、会話の流れが改めてリグレットへの同情染みた物になっていく・・・ティアの行動があまりにもおかしな物であり、リグレットの教えが悪かった訳ではないと二人も分かっている為に。
「・・・すみません、そろそろ戻らせていただきますよ。気分が降下した事は否定は出来ませんが、あまりこちらに居すぎても怪しまれるでしょうし誰かがこちらに来る可能性も否定出来ませんからね」
「そうですか・・・ではリグレット達によろしくお伝えください。今度会う時は立場を隠すことなく会えるようにすると」
「えぇ、では・・・」
微妙な空気になっていた中で戻ると言い出したディストに孔明は独特の言い回しを持って送り出す。今のような隠れて会うような間柄ではなく会おうと。












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