軍師と女忍、決意を見せる

「・・・成程、そういうことですか」
「ん~、何回か戻ってきたダアトの中で顔を会わせる事が無かったからちょっと油断してたな~」
そうして二人から話を聞いた孔明は納得し、くのいちは失念していたというように首を捻る。
「ちなみに丞相達はいつぐらいにアニスの元々の両親について動こうかとか考えてましたか?」
「いつとは限ってはいませんでしたが、少なくともモースとあの二人に借金をさせていた業者やそこに関連していた者達の処分を行う前くらいに話をしようと思っていました。と言ってもあの二人が相手ですからこういう狙いがあって貴殿方に借金をしていただくようにモースが仕向けていたなどと言っても、簡単に信じるような事にはならないでしょうから悪質な事をしていたからと良からぬ輩との関わりがあったことも含めて捕まえた・・・とだけ説明する予定でした。言ってしまってはなんですが、あの二人に詳しい事情を説明してもモース様がそんな悪いことをするつもりはなかったし、何か自分達に考えもつかない深慮があったといったように考えるでしょうからね。ですからモースの考えを始めにしたことについて二人が信じられないだろう部分は除いた話をして、もう借金は出来ないといったように言うだけに済ませる予定でした」
「・・・前にモースの事を信じるのはダアト内にはいっぱいいるとは聞いてましたけど、そこまで人を疑わないのは・・・」
「残酷なようですが、これが事実です。そしてアニスもそう理解したからこそ、我々の手を取りあの二人と袂を分かれると決断したんですよ」
「・・・アニス・・・」
ルークはその反応にどう両親に対応する気だったかを孔明に聞くのだが、返答の中身に何とも言えない気持ちを浮かべた視線をアニスに向ける・・・孔明ですらもこんな答えを返すしかない元々の両親のある意味では聞き分けのないと予測出来る行動の数々と、そんな両親に関してを諦めざるを得ない気持ちを抱いた事に。
「・・・そういう気持ちになるのは分かるよ、ルーク・・・でももう決めた事だってのもあるけど、あの二人には何を言っても変わらないと思うし何か暴力を奮われてもお金を借りたのは自分達で、返せないことは仕方無いことだって思うだろうっていうようになるんだろうなとも感じてるんだ・・・」
「っ、自分達が酷い目にあってもそんな風に考えるっていうのかよ・・・」
「あの人達はよくも悪くも自分達の行動がどういったものかの意味をちゃんと考えることはないし、悪い方向に人がこう考えるなんて余計にしない・・・だから自分達が悪いことをしたんだで、それを教訓にすることはないばかりかまた困ってる人がいるなら平気で人の為にってまたお金を使う・・・私が何を言っても聞かなかったし、悪循環とかそんなレベルじゃないんだよ・・・」
「・・・本当に苦労してきたんだな、アニス・・・」
アニスはその視線の意味に気付き元々の両親についてを苦さを盛大に滲ませながら語っていき、ルークは同情的な視線を強くするしかなかった。あまりにもアニスと元々の両親の意識の差が酷すぎるというのがありありと分かる話だった為に。
「まぁでもそれでアニスがこれからタトリン夫妻の行動に巻き込まれる事になるのは避けたいんだよね~。嘘をついて引き剥がしたっていうのは悪いとは思ってはいるけど、これからの事を考えるとアニスがタトリン夫妻の借金の事に関してまた巻き込まれかねないしね~。今は丞相の養子になったって言っても、元々お前はこの二人の子どもなんだし今の親である丞相から金をもらってこい・・・なんて言われかねない形でね」
「っ!・・・そういった可能性もある、のか・・・」
そうしてそこにくのいちがちゃんと引き剥がすべきである理由を付け加える形で気楽そうに口にすると、確かにとルークは苦い表情になる。あまり考えたくはないが、有り得ない事ではないと。









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