軍師と女忍、まとめる

「それに前にも似たような事を話したかと思いますが、アッシュがルークを自分の望む形で殺すような展開にしたところで彼がまともになる保証はないどころか、それこそルークがいなくなって様々に悪化する可能性もまた存在します。憎しみの対象がいなくなったからまともになると確定しているならともかくとしても、ルークを殺したのだから何をしてもいいという考えになることもそうですが、いきなり心の多数を占めていた物が無くなる事で脱け殻になる可能性も有り得ますからね」
「脱け殻になる、ですか・・・」
「あのルークへの偏執を見る限り、心の中の結構な割合を占めていた事は想像に難くはありません。ただ全てではないなら問題は多少はあってもいいのではないかと思われるかもしれませんが、同じく心の中の割合の結構な部分を占めているであろう謡将は事が済めば処刑という流れになり、ナタリア様も割合としては少なくないにしても以前の話から心の底から信頼を向けられるかとなるとそうは出来ないとなるでしょう・・・まぁキムラスカも割合の中に無いわけでは無いでしょうが、それでも前述の三者に比べれば割合は確実に低いと見ています。そしてそう考えればルークを殺して謡将が死んでしまえば、彼の中で割合を占めていた物の多数は一気に失われることになり、気持ちの張り合いが出なくなるでしょう。例え自ら選んだことであるとは言え、私に半ば無理矢理選択をさせられたことによってです」
「・・・彼の考え方なら自分で後悔なく強制させられて選んだ居場所というのもありますが、そういったルークの問題が片付いたなら後に残っているのはあらかじめ用意されて勝手は許されないものの、何もなければ勝手に王になれるといった状況・・・そう考えれば張り合いが無くなった事から、一気にやる気が出なくなる可能性があると言うわけですか」
「えぇ。暴走に関しては勿論避けねばなりませんが、かといってそうした形で無気力になっていただくのもまた以降に面倒になりかねません。主にアッシュをどうにかしてくれとキムラスカから泣き付かれる形でです。しかし最早そうなれば取り返しのつけようがありませんし、アッシュもアッシュでどのように言おうと空元気で返すのが精一杯でしょう。となればナタリア様にルークを殺した場面を見せることになったことに罪悪感及び、その事から申し訳無いと気にかけるようにしてもらった方が自然とアッシュ自身もルークの事がどうこうと考えることも無くなっていくでしょう」
「・・・そこまで考えてアッシュにナタリア様の事を解決しようと動いたと言うわけですか・・・遠大ではありますが、確かな効果が得られる。そう考えると改めて貴方がいかにすごいかと言うのを感じますね」
「お誉めいただき光栄です」
そうしてアッシュにもいかな問題があってこういった流れにしたかについてを話すとジェイドはしみじみとした声を漏らし、孔明は平然とした様子で頭を下げる。
「ただ何度も同じようなことを申し上げますが、ルークが本当に死ぬような事態でないからこそナタリア様にもこうして秘密裏に協力していただいています。我々は勿論言うつもりはありませんが、マルクトからその情報がアッシュにもたらされたとなったらどうなるか分かりませんので沈黙をお願いします」
「分かっていますよ、それは」
しかし頭を上げた後に改めて再度の口止めを強く願う声をに、ジェイドはすんなり頷く。今までの話から決してアッシュに事実を明かすわけにはいかないと理解しているために。









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