軍師と女忍、まとめる

・・・それで以降はナタリアも大人しくなり特に変わったことはなくアルビオールは進み、程無くしてダアトに辿り着いた。



「・・・さて、こうしてダアトに着いた事ですからルークはディストに付いていってください。しばらくの住まいに案内しますので、一先ずはダアトに慣れた上でこれからどうしたいのかを考えてください。後は外出する際はあまり目立たないように後で渡す教団員だと示す法衣を着て、フードを目深に被ってください。それで余程怪しいと思われるような行動をしなければまず他の教団員も声をかけるなどしないでしょうし、何か話し掛けられたなら当たり障りのない会話をしておけば問題はないでしょう」
「はい、分かりました」
「では行きましょう」
・・・そうして導師の私室に来た孔明達だが、そこで孔明が早速とここでの生活について話をするとルークはすんなりと頷いて案内役のディストと共に部屋を後にしていく。
「それでナタリア様はリグレットに案内させますので、数日はそちらでゆっくりと気持ちを整えられてください。今の貴女の表情でも成功はするでしょうが、万全の状態であるに越したことはありませんからね」
「・・・私がルークが実際に死んだ場面を見たからこそ表情が優れない、と言うように見せる為の準備をしなければならないのですね・・・」
「はい、そうです・・・とある本にプラシーボ効果という研究成果について書いてある本がありました。それは簡単に言うなら思い込みの力による物について書かれた理論なのですが、思い込みと言うものは案外馬鹿には出来ません。思い込むと言うことは信じることに繋がりますが、もしアッシュが我々からもうルークは殺したから何も心配することはないと言われたとしてもその言葉をすんなりと信じるようなことはしなかったでしょう。今までの旅路での事がありますからね・・・ですがナタリア様に限って言うならその限りではありません。むしろナタリア様ならばこそ沈痛な面持ちを浮かべればその裏にある考えを疑うことなく信じる事でしょう。彼女が自分に嘘をつくはずがないと」
「っ・・・」
そうして次にナタリアへと話し掛ける中で孔明はルークを生かすための策の概要を話していくのだが、ナタリアはその中身に苦み走ったというような表情を浮かべた。









・・・プラシーボ効果。薬の実験の為に効果を見込める成分の入った薬と、見た目だけは同じだが薬として何の効果もない偽物の薬と知らせず投与した結果として、偽物の薬を飲んでも本物の薬を飲んだと思う思い込みによって薬が効果を発揮した・・・そういった実験結果についてをさす物である。

これは人の考えを逆手に取ったいい実験だと孔明は思った上で、自身もそう言った思い込みを用いた策を使ってきただけにこういった風に人間がなりうる事は間違いではないとプラシーボ効果について書かれている本を見て納得したものである。
そして今回、ルークとアッシュの問題をどうにかするにあたり用いる事にしたのがプラシーボ効果を応用する形にしたのである。ルークが死ななきゃ気が済まないなら、死んだというように見せるための手段として、アッシュが納得する為の策の核としてだ。

しかしアッシュと旅をする中で孔明達もそうだが、例えインゴベルトがルークは殺したと言っても素直に信用するとは思えない・・・そう考えたからこそ当人にも言ったが、ナタリアにその役目を担ってもらうことにしたのだ。他の誰でもなくナタリアなら、アッシュは疑うような事はないだろうと。









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