軍師、暗躍と飛躍

「意外でしたか?これでも大詠師の配下として長い身ですから、何も言われずとも望まれるような事に対しての事後処理を行うことなどはお手の物です」
「・・・あぁ、それは・・・」
だが孔明からの返答に予想外とばかりに苦い顔を浮かべるヴァン・・・それもそうだろう。ダアトのある程度上の位置にいる人間の中ではモースの横暴さという物は周知の事実だ。そんなモースの尻拭いについてを堂々と言われてしまえば、ヴァンもどうとも言いようがなかった。
「と言うわけですので、ダアトに報告をする必要はありません。このまま参りましょう、謡将」
「・・・えぇ、そうしましょう」
優秀が故に、不遇になりうる・・・そう取ってしまい完全に心を揺らされたヴァンは孔明の言葉に頷くしか出来なかった。何故勝手に行動したのかと文句を言えるような中身でもないどころかむしろ称賛されてしかる物であったために。






・・・そんな風にしてヴァンも含め、キムラスカの領事館に行ってからバチカルに向かう船へ向かった孔明達。だが乗組員からまだ少し待たねば出航出来ないと言われてしまう。
「・・・少し待たねばなりませんか。ではルーク殿を始めとした皆様はどちらかで休憩されてください、私はこの辺りで待機して準備が整いましたら皆様をお呼び致します」
「いいのか?お前は休憩しなくて」
「然程長く時間はかからないようですので、気になさらないでください」
「ふ~ん、んじゃそうすっか」
「とは言ってもどこに僕達がいるかが分からないとコーメイも困るでしょうから、時間が来たらケセドニアの代表であるアスターの屋敷に来てください。そちらでお待ちしています」
「分かりました、導師」
「では僕達はこれで・・・」
その流れから孔明が休憩するように言い、ルークとイオンが特に反対する様子もなく頷き待つ場所について言ってから一同は場を後にしていく。
「・・・さて・・・」
「・・・やぁ、丞相。その様子じゃ私らが接触してくるのも計算済みだったようだね?」
「ここは貴女方の主な活動地ですからね。どこかに遠征していなければまず、表向きダアトを出ることのほとんどない私に接触してくるのは計算しなくても分かることです」
「・・・相変わらずだね、本当に丞相は」
そして場からルーク達がいなくなった方向とは別の方向を孔明が向くと、特徴的な男二人を引き連れた派手な女が現れ平然と会話をする。ただ相手は平然とした態度の孔明と違い、どこか苦笑気味でいて呆れたような様子だ。
「・・・それで、わざわざ一人になってくれた訳はなんなんだい丞相?ちょっと前に来た時は一人になってなかったから、今回は何か用があるんだろうけど」
「えぇ、暗闇の夢としての貴女方ではなく漆黒の翼としての貴女方に頼みたい事があります。それも他に用があっても、こちらを優先していただく形でです」
「・・・丞相がそこまで言うって事は、いよいよ行動するつもりかい?目的の為にさ」
「えぇ、そうです。むしろそろそろ動かねば手遅れになるでしょう。それだけの段階に来ています」
「成程、丞相がそこまで言うって事は本当にそれだけ切羽詰まってるって事か・・・分かったよ、それなら協力させてもらうさ。元々丞相が動く時には私らも動く予定だったしね」
「えぇ、助かります」
ただ一瞬で空気を引き締めた女に対して孔明も改まって『漆黒の翼』に頼みと強調してから話を進め、女が頷いた事に孔明は頭を下げる。









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