軍師と女忍、動き回る

「まぁどちらにせよ、ダアトはしばらくは預言が詠まれなくなった後の事後処理及び存在の在り方を変えねばなりませんから我々は四苦八苦する日々を送ることでしょう。それからもお手柔らかにお願いします」
「イヒヒ・・・丞相にそうおっしゃっていただけるのでしたら」
そんな内心の内はさておきと孔明は自分達の立場が弱くなることを口にしながら今後の関係を望み、アスターはすんなりと了承をした。









・・・それで以降はとりとめのない、それでいてどこか油断ならない空気を滲ませながら会話をした後に孔明はあてがわれた部屋に戻る。
「お疲れでした旦那様~。どうでしたか、アスターさんとの話し合いは?」
「久々に油断ならない緊張感溢れる会話をしましたよ。やはりあの方はやり手ですね」
「まぁあの人にとっては預言なんか関係無いって思って動いてきたんでしょうしね~。表向きはダアトに従ってるって感じに振る舞ってはいても、預言に詠まれたからってだけでこのケセドニアをここまで発展させることが出来たとは思えませんしね~」
「えぇ。預言や才覚だけでここまで一つの街を発展させることはまず出来ないでしょう・・・あぁして怪しい笑いかたをしながらも誠実に事に対応する事からあの方はこのケセドニアの代表となっていますが、その顔の裏にどれだけの何かを秘めているのかは私にも分かりません」
それで出迎えてくれたくのいちと先程のアスターとのことについてを話し合う孔明は、自分でも計りきれないと口にする。アスターの内心に考えがどれだけの物かを。
「ただそんなアスター氏の手で我々に険が及ぶような展開はそうはないでしょう。何せ人がいなくなるダアトに手を出す旨味はそうはない上、離れていく人々の受け皿に多少なりともなることからその人々があの方にとっての利となります。そしてそんなダアトに残るのは行き先がないから残ったという者か、我々のようにこれからを作るためにとの意識がある者・・・前者はともかく、後者である我々との敵対は避けたいでしょうからね」
「アスターさんの性格を考えると勝てる戦かもそうでしょうけど、損害が出ないかに儲けが出るかが何より重要でしょうしね~。そもそも政治をすることより商人としての方が気質に合ってるでしょうし、変にこっちにちょっかいをかけてくるとは思えませんしね~」
しかしそれを踏まえた上でも問題はないと孔明は言い、くのいちもまた気楽そうに返す。



・・・アスターは確かに孔明の知るオールドラントの人間の中でも、最も油断ならない存在だ。しかしくのいちが言ったよう、商人としての気質が誰よりも強いことがその考えに歯止めをかけていて思考を読むことは決して難しくない相手と言えた。

そんなアスターが勝率が然程高くもなく得られる旨味も少ない勝負・・・即ち人のいなくなったダアトを狙い、孔明との戦争とは言わずとも戦いに乗り出すはずがないと孔明自身にくのいちは見ていた。アスターも孔明の能力を十分に理解しているだろうことから、そんな無謀なことはしないだろうと。

だがそうして転んだわけではないが、ただで何も儲けることなく終わるほどアスターは甘くはない。ダアトは確かに攻めがたい物だとは認識はしただろうが、それでも何らかの弱味があればアスターは行動に起こそうとしてくるだろう。孔明が相手でもだ。

しかし孔明は更にその上を行っているのだ。そうして付け込む隙を与えているようでいて実質的に全く隙を見せることなく話を進めていた孔明の方が。









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