軍師と女忍、動き回る
「・・・それだけではないでしょう、私をこちらにお呼びした理由は?」
「・・・イヒヒ、流石丞相。えぇ、こちらに来ていただいたのは単なる世間話ではございません」
ただその笑顔が二人ともに次に発した言葉で意味合いを変える物になった・・・互いの心の内を探るような、単純な物ではない笑顔へと。
「改めまして無事に和平の会談にまでこぎつけたことは流石でございます。貴方の手腕を信じて正解でした、丞相」
「いえ、それを言うのでしたら私の言葉を信じた貴方の英断こそ流石と言えましょう。普通なら信じるはずのないことを信じ、普通なら協力するはずもないことに協力すると決めた貴方の英断は」
「イヒヒ・・・貴方にお会いした時に一目見て分かりました。この方は単に大詠師の配下で終わるような方ではなく、敢えて口汚く申し上げるなら大詠師と違い我欲で動くような方ではないと。そのような方が話が表に出れば自らの首を絞めるような事を言われる筈はないと見たのですよ・・・最も、貴方にはそう私が決断することも見抜かれていたようですがね」
「聡明な貴方なら少なくとも私の話をそのようなことなどないと一蹴する筈はないと思ったまでですよ」
「イヒヒ・・・お褒めいただきありがとうございます」
まずはと皮切りにアスターの礼から話は始まり穏やかに二人は互いを誉めあうように会話をしていくのだが、何かを探りあうような油断ならないと端から見て思わせるような空気に満ちていた。
「・・・しかし本当によろしいのですか?」
「何がですか?」
「貴方が導師にならなくてよろしいのかということですよ。大詠師が貴殿方の策略によりどう見てもまず元の立場に戻ることは望まれない所にある事に加え、イオン様も何も人々に言わなければ歴代導師の血を引いている唯一の存在とは言え貴方にその地位を譲られても構わないと考えられることでしょう。そして詠師の方々も貴方が導師となるのであれば反対はされぬ筈ですが・・・」
「その事に関してですが身に余る光栄だという事は承知していますが、私はあくまでも人の下で活動することの方が性に合っています。それにイオン様も着実に成長しています・・・然程私としてはダアトの未来については心配はしてはいませんよ」
「イヒヒ・・・そのように言われますか、敵いませんな」
そんな空気の中でアスターは将来的に導師にならないのかとイオンの事も併せて話した上で聞くが、孔明が迷う素振りもなく微笑で返す姿に苦笑に見えそうな笑みを浮かべる。
(アスター殿は私が導師になることの方を望んでおられるようですね。おそらくは私がダアトの導師となることでこれまでのような形で動くことがないようにと願っていたのでしょうね。これまでは自分の利にもなっていたから見過ごしはしたものの、これからの事を考えればあまりダアトに利を取られたくないと考えるでしょうからね)
そんな表情を浮かべるアスターの内心と考えについて、孔明はどのような物かと推察していた・・・導師の立場になれば確かに立場上はダアト内で誰より偉くはなるが、今までのような献策やら頭脳を働かせてこその臣下としての立場からの行動が取りにくくなる上、象徴としての働きを求められることからあまり軽々しく動き回ることも出来ない・・・そういった効果をアスターは求めていたのだと。
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「・・・イヒヒ、流石丞相。えぇ、こちらに来ていただいたのは単なる世間話ではございません」
ただその笑顔が二人ともに次に発した言葉で意味合いを変える物になった・・・互いの心の内を探るような、単純な物ではない笑顔へと。
「改めまして無事に和平の会談にまでこぎつけたことは流石でございます。貴方の手腕を信じて正解でした、丞相」
「いえ、それを言うのでしたら私の言葉を信じた貴方の英断こそ流石と言えましょう。普通なら信じるはずのないことを信じ、普通なら協力するはずもないことに協力すると決めた貴方の英断は」
「イヒヒ・・・貴方にお会いした時に一目見て分かりました。この方は単に大詠師の配下で終わるような方ではなく、敢えて口汚く申し上げるなら大詠師と違い我欲で動くような方ではないと。そのような方が話が表に出れば自らの首を絞めるような事を言われる筈はないと見たのですよ・・・最も、貴方にはそう私が決断することも見抜かれていたようですがね」
「聡明な貴方なら少なくとも私の話をそのようなことなどないと一蹴する筈はないと思ったまでですよ」
「イヒヒ・・・お褒めいただきありがとうございます」
まずはと皮切りにアスターの礼から話は始まり穏やかに二人は互いを誉めあうように会話をしていくのだが、何かを探りあうような油断ならないと端から見て思わせるような空気に満ちていた。
「・・・しかし本当によろしいのですか?」
「何がですか?」
「貴方が導師にならなくてよろしいのかということですよ。大詠師が貴殿方の策略によりどう見てもまず元の立場に戻ることは望まれない所にある事に加え、イオン様も何も人々に言わなければ歴代導師の血を引いている唯一の存在とは言え貴方にその地位を譲られても構わないと考えられることでしょう。そして詠師の方々も貴方が導師となるのであれば反対はされぬ筈ですが・・・」
「その事に関してですが身に余る光栄だという事は承知していますが、私はあくまでも人の下で活動することの方が性に合っています。それにイオン様も着実に成長しています・・・然程私としてはダアトの未来については心配はしてはいませんよ」
「イヒヒ・・・そのように言われますか、敵いませんな」
そんな空気の中でアスターは将来的に導師にならないのかとイオンの事も併せて話した上で聞くが、孔明が迷う素振りもなく微笑で返す姿に苦笑に見えそうな笑みを浮かべる。
(アスター殿は私が導師になることの方を望んでおられるようですね。おそらくは私がダアトの導師となることでこれまでのような形で動くことがないようにと願っていたのでしょうね。これまでは自分の利にもなっていたから見過ごしはしたものの、これからの事を考えればあまりダアトに利を取られたくないと考えるでしょうからね)
そんな表情を浮かべるアスターの内心と考えについて、孔明はどのような物かと推察していた・・・導師の立場になれば確かに立場上はダアト内で誰より偉くはなるが、今までのような献策やら頭脳を働かせてこその臣下としての立場からの行動が取りにくくなる上、象徴としての働きを求められることからあまり軽々しく動き回ることも出来ない・・・そういった効果をアスターは求めていたのだと。
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