軍師と女忍、動き回る
・・・それで少しの間、孔明はインゴベルトへと説明した。アッシュがどうにもならなかった場合についての対処の策を。
「・・・となりますが、あくまでも今の策については最終的な手段としてと認識しておいてください。最初から今言った策を使うとなると陛下自身がそうするようにと身構えてしまい、ナタリア様達にも不自然な様子だと疑われかねません」
「むぅ・・・そうか・・・」
・・・そうして話を終えるがあくまでも最終的な手段と強調する孔明に、インゴベルトは理解はしても完全に納得しきれていないといった様子を見せる。
「・・・確かに今聞いたような事が続けば、陛下も不安に思われるでしょうし早くそのような状態を解決したいと思われることでしょう。ですが陛下は陛下という立場にあるからこそ、決断の時を見誤るようなことは望まれません」
「丞相・・・?」
だが孔明がそこでいつもの空気と違いどこか強い実感がこもったような声で助言を向けてきたことに、インゴベルトは訝しげな表情を浮かべる。
「確かにあの方にナタリア様の事はこれからのキムラスカの命運を左右する一大事と呼べる事でしょう。ですがそれならばこそ陛下自身で物事を考え、最善は何かと決断することが大切です。無論周囲の者に助言を求めるなり手助けをしてもらうことくらいは構わないでしょうが、上に立つ者として下にいる者を信頼することも大事であり、同時に時には問題を起こせば非情の決断を下すこともまた大事になります」
「・・・丞相、どうしていきなりそのようなことを・・・?」
「望まれるなら私は助言を送ることは出来ます。ですが決断を下すのはあくまで陛下自身であることを忘れないでいただきたいのです・・・どうしたいかを考えた上で、どうするのかを決める・・・もっと言うなら間違いを選ばず、時には残酷とも人には取られようとも正しい判断を下したいというなら」
「っ!・・・今の言葉は染み入った・・・確かにそちらに聞くだけ聞いてはいたが、直接的に自分で判断することをわしは放棄しておったのだな・・・」
そこから続いた孔明の言葉に、インゴベルトはハッとした後に苦くも噛み締めるように声を漏らした。決断を下すには責任が存在するが、孔明の案に従うなら大丈夫とインゴベルトはどこかで考えていたことをその言葉で自覚した為に。
(ん~、旦那様前の主に言われていたことに私から聞いた後の結末を思い出しながら話をしたっぽいな~・・・状況的に色々と被る部分もあったっぽいし)
そんな光景を端から見ていたくのいちはその普段の孔明らしくない様子から発せられた言葉の意味を察する・・・孔明の前の主であった劉備に言われたこと。それは息子の劉禅が国を納めるに値しないと見たならそなたが国を納めろとの物だった。しかし孔明がその言葉を固辞して亡くなった後、所属していた国である蜀が追い詰められたとは言え降伏して滅亡したという結末をくのいちから聞かされた時、流石に孔明は沈痛な面持ちを浮かべた。主から託された国をそのような形で滅ぼしてしまったことに、もっとうまく立ち回ることが出来たらだとか自分がちゃんとした判断を下せたらその結果を変えられたのではという気持ちを吐露する形でだ。
(陛下もその気持ちを感じたんだろうな~・・・こういう時って理路整然とした言葉以上に実感のこもった言葉が効くし)
そんな想いがあるからこそ、インゴベルトも感じ入った・・・そうくのいちは感じ取っていた。時として理解を求めるなら孔明が言ったような強い想いのある言葉もまた必要になると。
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「・・・となりますが、あくまでも今の策については最終的な手段としてと認識しておいてください。最初から今言った策を使うとなると陛下自身がそうするようにと身構えてしまい、ナタリア様達にも不自然な様子だと疑われかねません」
「むぅ・・・そうか・・・」
・・・そうして話を終えるがあくまでも最終的な手段と強調する孔明に、インゴベルトは理解はしても完全に納得しきれていないといった様子を見せる。
「・・・確かに今聞いたような事が続けば、陛下も不安に思われるでしょうし早くそのような状態を解決したいと思われることでしょう。ですが陛下は陛下という立場にあるからこそ、決断の時を見誤るようなことは望まれません」
「丞相・・・?」
だが孔明がそこでいつもの空気と違いどこか強い実感がこもったような声で助言を向けてきたことに、インゴベルトは訝しげな表情を浮かべる。
「確かにあの方にナタリア様の事はこれからのキムラスカの命運を左右する一大事と呼べる事でしょう。ですがそれならばこそ陛下自身で物事を考え、最善は何かと決断することが大切です。無論周囲の者に助言を求めるなり手助けをしてもらうことくらいは構わないでしょうが、上に立つ者として下にいる者を信頼することも大事であり、同時に時には問題を起こせば非情の決断を下すこともまた大事になります」
「・・・丞相、どうしていきなりそのようなことを・・・?」
「望まれるなら私は助言を送ることは出来ます。ですが決断を下すのはあくまで陛下自身であることを忘れないでいただきたいのです・・・どうしたいかを考えた上で、どうするのかを決める・・・もっと言うなら間違いを選ばず、時には残酷とも人には取られようとも正しい判断を下したいというなら」
「っ!・・・今の言葉は染み入った・・・確かにそちらに聞くだけ聞いてはいたが、直接的に自分で判断することをわしは放棄しておったのだな・・・」
そこから続いた孔明の言葉に、インゴベルトはハッとした後に苦くも噛み締めるように声を漏らした。決断を下すには責任が存在するが、孔明の案に従うなら大丈夫とインゴベルトはどこかで考えていたことをその言葉で自覚した為に。
(ん~、旦那様前の主に言われていたことに私から聞いた後の結末を思い出しながら話をしたっぽいな~・・・状況的に色々と被る部分もあったっぽいし)
そんな光景を端から見ていたくのいちはその普段の孔明らしくない様子から発せられた言葉の意味を察する・・・孔明の前の主であった劉備に言われたこと。それは息子の劉禅が国を納めるに値しないと見たならそなたが国を納めろとの物だった。しかし孔明がその言葉を固辞して亡くなった後、所属していた国である蜀が追い詰められたとは言え降伏して滅亡したという結末をくのいちから聞かされた時、流石に孔明は沈痛な面持ちを浮かべた。主から託された国をそのような形で滅ぼしてしまったことに、もっとうまく立ち回ることが出来たらだとか自分がちゃんとした判断を下せたらその結果を変えられたのではという気持ちを吐露する形でだ。
(陛下もその気持ちを感じたんだろうな~・・・こういう時って理路整然とした言葉以上に実感のこもった言葉が効くし)
そんな想いがあるからこそ、インゴベルトも感じ入った・・・そうくのいちは感じ取っていた。時として理解を求めるなら孔明が言ったような強い想いのある言葉もまた必要になると。
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