軍師と女忍、動き回る

「・・・ふむ、会談を行うことは別に問題はないと」
「はい。後はお伝えした日付にケセドニアに来ていただければ会談となります」
「うむ・・・そういうことならそうするが、そちらはどうする?」
「我々はケセドニアに先に参り、準備の為に時間を取りたいと思っています。リグレットに先にケセドニアに入っていてもらっていますが、我々も用意に入るために」
「そうか・・・」
・・・それで謁見の間に来た孔明達一行(もしもの事を考えルークはアルビオールの中で待機中)は話を終え、インゴベルトは納得といった様子を見せる。
「それで他に用がなければ我々はすぐにこちらを出ますが・・・」
「・・・済まぬが少しだけわしの話に付き合ってくれ。今から兵を外す」
「はっ」
そうして何もないなら行くと孔明が言うとインゴベルトは少し考えた後に話がしたいから待つように言い、すぐに頷く。



・・・それで謁見の間から兵が出ていった後、インゴベルトは途端に疲れたような表情を浮かべた。
「ふぅ・・・」
「・・・大分疲れておられるようですが、ナタリア様達に何かあったのですか?」
「そうだ・・・もう少し待たねばならぬとは聞いてはいるが、クリムゾンからの報告ではやはり芳しい状況ではないとのことだ。特にアッシュがな・・・」
タメ息を吐くその姿に孔明は何があったのかを察すると、インゴベルトはそのまま深く疲れたように言葉を漏らしていく。『ルーク』と呼ぶことなく、『アッシュ』と呼ぶ形で。
「一応はクリムゾンにシュザンヌの前では取り繕うような態度は取れているが、やはり他の屋敷の人間には時折態度が一気に怒りに染まってしまうらしい・・・そしてその理由はルークとの差異であったり、ルークの事を思い出させるような事を言った時がほとんどだ」
「ほとんどということは、他に何か理由があるのですか?」
「部屋の掃除に来たメイドだとかを必要ないといったことを言い、追い払うような事を言っているようだ。クリムゾンの見立てにそちらとの旅の間の事から、理由として自分の領域に適当な誰かにいてほしくないからだとは見当されているが・・・」
「その推測で間違いはないでしょう。今のあの方は籠の中の鳥と大差のない身となり、自由とは程遠い立場にあります。自由がないことは今のあの方にとってかなりの苦痛でしょうね」
「やはりか・・・」
そうしてインゴベルトはその話についてを語っていき、孔明もアッシュがどうしてそうなのかの理由をすぐにこうだろうと返すと辛さを滲ませた表情を浮かばせる。
「・・・丞相よ。そちらが考えた策について、普通なら問題はない物だとわしも思っておる。今はまだ待つしかないということも・・・しかしこのままアッシュがそちらの策の後に劇的に変わらぬ事も今となって不安になってきた。故に何かその時の為の策はないか?」
「・・・無いわけではありませんが、あくまで最終手段及び私がそう申し上げたとは言わないようにしてください。もしそうなった場合に私がそう言ったと聞いたなら、アッシュは陛下に公爵の言われたことでも聞かないばかりか反発心から怒りに任せて予測できない行動を取りかねませんので」
「・・・分かった、そうする。だから話を聞かせてくれ・・・」
そうしてインゴベルトはすがるように孔明に策が欲しいと口にすると、本人に言わないならと条件をつけるとすぐに頷き先を促す。早く聞かなければ心が落ち着かないといった様子で。









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