軍師と女忍、見切りをつける

「・・・まぁ、それももう終わりなんだけどね~。後は死体は勝手に処理させてもらうけど、これはごめんね~。ガイとしては英雄ガルディオスとして墓に名を刻んで弔われたかったかもしれないけど、名もない墓に弔うことになるからね~」
そうしてくのいちは軽い口調ながらも、その身の弔い方を謝罪する。



・・・後の面倒を考えれば当たり前ではあるが、最初からガイの事を真っ当な形でくのいちは弔うつもりはなかった。家名の入った墓を作ってそこに入れて、葬式を執り行うような事をするつもりは。

と言うよりむしろ逆である・・・このダアトに限ったことではないが、身元不明の遺体とは言えちゃんと供養するためにと名を刻むことのない名も分からない遺体を弔う為の墓場と言うものが存在する。そしてくのいちはそこにガイの遺体を納めようと決めていた・・・その墓場ならたまに人が供養の気持ちで訪れることはあっても、わざわざ墓を荒らして死体を確認するような人物などいるはずもないと見たためだ。

無論くのいち自身、ガイの身の上だったりを差し引いた上でもどれだけ人道を外れた事をしているのかという自覚は十分にある。しかしガイがガルディオスであったこともそうだが、『ガイ=セシル』として何故ダアトで死んだのかなどということをキムラスカに知られることも厄介になりかねない可能性も無いとは言えないのだ。一応はバチカルでもそこそこ顔の広かった事もそうだが、マルクトに亡命という形を取ったガイの名前がキムラスカの人間に見付かることは。

故に名前なしの墓ではあるがちゃんとした形で弔おうとくのいちは決めていた。と言ってもガイにそこまで思い入れがないことに加え、足しげくガイの墓に通うようなことなどすれば不審に思われかねないので墓に入れた後は放置する気でいる・・・残酷なようだが、これが理屈として正しいとくのいち自身考えている為だ。









・・・それでくのいちはイオン達に報告に行く傍ら、ガイの死体の処分は後だと他の人物に見られないようにと部屋を施錠して出ていった。ガイの死体が横たわる部屋を後にする形で。



「・・・と言うわけでガイはガルディオスだって証言をもらった上で、もう死んでもらったよ~。多分ガイが何もしないみたいな事を言ってきたからってそれで情けをかけたって、結構な確率で後々に自分の判断でろくでもないことをしそうだったし」
「確かにそうなった可能性は高いでしょうね・・・まずはそこまでしていただいたことを感謝しますが、丞相達はまだ謡将と話をされているのですか?」
「多分もうちょいしたら来るだろうとは思うけれど、まぁそこは待っていてもらいたいっすね~。行き違いになる可能性もない訳じゃないんで」
「まぁそういうことなら仕方ありませんね」
・・・それでイオン達の所に来て諸々の説明を終えたくのいちに対し、ジェイドは納得といった様子を見せる。
「ジェイド・・・一つ聞きたいんですが、経緯をよく知らないファブレ側がガイに安全になったから帰ってきていいように便宜を図るといった言葉をかけてきたら、どう対応するつもりなんですか?」
「一使用人にそんな言葉が来るとは思いませんが、そう来たならガイは行方不明だと返しますよ。周囲の人物に聞き込みをしたらキムラスカに戻りたいと度々口にしていたと言ったような事を口にしていたと添える形でです」
「・・・それでガイはキムラスカに戻ろうとした最中に何かあっていなくなったのではないか、と思わせる為ですか・・・」
「まぁキムラスカに戻りたいという気持ちも嘘ではなかったからいいでしょう・・・最も、ファブレへの復讐心があったからなどとは言いませんがね」
それでイオンがもしもの時はガイの事をどうするのかと聞くが、ジェイドの平然とした答えに納得する・・・決して嘘のある話をしているわけではなく、単に言ってない事実があるだけで本当の事を言っているだけなのだと。









.
16/18ページ
スキ