軍師と女忍、見切りをつける

「・・・復讐心に敵対心を捨てきれず、忘れられなかったことに関してはまぁ分からないでもないよ。前に生きてきた時でもそういった人はそこそこ知ってるし、復讐を成就させた人もそうでない人も見てきた・・・けどね、そういった人達ってそんな気持ちを表に出すか心を押し殺すことをしてきたんだ。少なくともガイみたいにどっち付かずな気持ちを抱えて悩んで十年以上なんて時間を過ごすなんて人はいなかったよ」
そうしてくのいちは昔を懐かしむような口調で自分の知る者達についてを口にしていく。



・・・かつてくのいちが生きていた世界では、国と国の争いなどそう珍しいことでもなく恨み辛みが生まれることなどよくある事だった。そしてその中でもくのいちの印象に残っているのは何度か見た程度でしかないが、島津と立花という二人の関係であった。

と言っても立花はあくまで島津に強く敵対心を見せているという物であったが、それでも立場上はその時は味方というくくりであった為に直接的に争うことはなかった。と言っても口喧嘩に些細ないさかいはよくあったようだが、そこは大きな問題ではない。

ここで重要なのはガイのように十年単位で復讐相手の家に潜り込んでおきながらも、それを実行出来なかったことだ・・・復讐を果たして生き残りたいという気持ちを持つこと自体は間違いではないだろう。だが立花のような人物を見てきたからこそくのいちは思うのだ・・・復讐を諦めきれないが行動にも移しきれないその姿は、くのいちからすればあまりにも甘えた物であった。



「ただそう言ってもルークに絆されただとか謡将の言葉にだとか翻弄されてきただとかみたいな感じに私が聞いたらガイは答えるんだろうけれど、そんな風になるくらいならいっそどっちとも離れるって選択肢を取るべきだったんだよ・・・それこそマルクトに戻るとまでは言わずとも、一度バチカルから離れるって選択肢をね」
くのいちはそこから二人から離れるべきであったとそっと漏らす。キムラスカから離れるべきだったと。



・・・立花が島津に敵対心を持ち続けながらも実際に刃を向けなかったのは、敵対心を行動に表す事により自分の家の立場をまずくしてはいけないといった考えもあったからだ。何しろくのいちが二人の事を見たのは日本という国の統一が間近になった時に最後に残った障害を下すための時で、統一しようとしていた人物の配下になっていた時だ。そんな時に島津憎しと行動を起こせば立花の立場が一気に危うくなることを立花自身よく理解していたことから、敵対心は見せつつも家を守るためにと実際に行動には移しはしなかった。

ただそこで立花とガイが違うのは周りの影響から行動に移せなかったと言うよりは、移さないと立花自身の考えで決めたことにある。周りの状況から選べる選択肢が色々と狭まっていたのは事実ではあるが、それでも立花は忍耐の道を選んだ。

しかしガイは立花と違い、選択をすることを選ばなかった・・・それこそ周りの状況から色々と選択をするには難しい物があっただろうことは多いだろうが、それでも十年以上と行動を起こさず燻り続けるにはかなり長い時間を過ごしてきたのだ。いくらなんでもこれだけの時間は長いとくのいちからは言えた。

それでもガイから言わせれば様々に迷ってきたからこそと言ったような答えが返ってくるだろうとはくのいちには想像出来たが、そこまで悩むのならばいっそ復讐をするかしないかの結論を出すためにもしばらくでもキムラスカから離れてしまえば良かったともくのいちは思ったのだ。周りに気持ちや考えに左右されてしまい決めることが出来ないなら、むしろ誰も邪魔しない所で自分だけで考える時間を作りどうするべきかを決めれば良かったと。









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