軍師と女忍、見切りをつける

「・・・最初、コーメイから話を聞いた時はガイの事も含めてどうするべきかって考えました。この場にいたくないならいなくてもいいって・・・正直、話を聞いてここに来たくないって気持ちもありました。でもそうして話を聞かないなんて事をしたら、駄目な気がしたんです。ガイの事とかもそうですし、他の嫌なことも含めて逃げ出すような事になるんじゃないかって・・・」
「・・・どちらかと言えば、お前は逃げ出すようなタイプではなかったか?」
「自分でもそう思います・・・でもコーメイの庇護に入るって決めた以上、辛いことから逃げてばかりじゃどうにもならないって考えるようになったんです。そしてこれが最後に師匠やガイと会える機会だと考えた時、これを区切りにするべきだとも思ったんです・・・コーメイはすぐに変わるのは難しいって言ったんですけど、俺がちゃんと変わって生きていける為に・・・」
「・・・フッ、そういうことか・・・」
そうしてルークがいかに自分の中にある気持ちを必死に言葉にしていくのか・・・その姿と言葉を受け、ヴァンは少しだけ微笑むように目を閉じる。
「・・・まぁルークはこう言ってくれましたが、ガイが今頃妻の手により死んでいるだろう事に変わりはありません。そして貴方も近い内に処刑をさせていただきます。よろしいですね?」
「・・・致し方ありませんな。最早私は貴方に抵抗出来るような状態に後ろ楯もない状況ですからね・・・」
孔明はそんな空気に改めてガイもそうだがヴァンも死ぬ予定にあると切り出し、当人は仕方無いと観念したように漏らす。自分もガイも最早生きる道はないのだと・・・









・・・同時刻、ダアト内のとある一室に場面は移る。
「がっ・・・はっ・・・あっ・・・」
「・・・」
・・・地面に倒れ落ち、喉を押さえながら苦悶の声を漏らしていくガイ。近くには割れたグラスが散乱していて、くのいちが無表情のままその光景を眺めていた。だがすぐに段々とガイは力なく動かなくなっていき、もうピクリとも動かなくなった時には苦しみにひきつった表情のまま・・・息を途絶えさせていた。
「・・・引っ掛かるとは思っていたけど、こうもあっさり飲み物を手にして飲んでくれるとはね~。ま、変に勘が良かった場合の方が面倒だったからこれでいいんだけどさ~」
そうしてくのいちは頬を指でかきながら呆れたように言葉を口にしていく・・・先程気分を落ち着けるためにと手渡した毒入りの水の入ったグラスを疑う事なく受け取り、迷いなく勢いよく飲み干した事に。
「・・・人を呪わば穴二つなんて言葉があるけど、誰かを殺そうとするってことは誰かに殺される可能性があるってことを理解してなかったのはね~。まぁガイ的には私や旦那様がこんな形で殺しにかかるなんて全く思っちゃいなかったんだろうけどね~。多分グランコクマに自分を送って旦那様を始めとしてもうそれで関係は切れると思ってたんだろうし・・・でもそんなに甘くなかったんだよな~、これが」
そしてそのままガイを見下ろしつつ、見通しが甘かったのだと口調だけは砕けさせたようにくのいちは言葉にする。あくまで口調と声色だけであり、表情は冷めきった物であったが。









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