軍師と女忍、押さえ付ける

「申し訳ありませんが、ルーク様とナタリア様にやっていただくことはないと丞相はおっしゃっています。ですので諦められてください」
「なっ、なんでお前がそんなことを・・・!」
そんな時にくのいちが口調を糺して突き放すことをあっさり口にし、アッシュは苛立ちを浮かべながら何故と言う。
「私と陛下が話をした中でお前やナタリア様が付いてくると言い出しかねんことを考え、丞相にどうかと確認を取ったんだ。そうしたところ今のような答えをもらったが、その答えだけで満足するとは思えなかったので奥方に来てもらったのだ。丞相の意志はこうだと二人に聞いてもらうためにな」
「うっ、くっ・・・」
しかし公爵からの返しにすぐにアッシュは勢いと言葉を失うが諦めきれてないといったその姿に、くのいちは公爵へ視線を向ける。
「公爵・・・すみませんが、今だけ彼をアッシュとして扱い言葉が乱れることを許していただけるでしょうか?」
「・・・うむ、いいだろう。そちらも言いたいことがあるであろうからな」
「ありがとうございます、では・・・」
「っ・・・!」
それで色々と変えることについての許可を願うとすぐに公爵は許可を出し、くのいちが視線をアッシュに向けると萎縮したように身を震わせた。その目には温度がなく、物を見るかのような視線だった為に。
「アッシュ・・・私達に付いてきて何をするかもそうだけど、自分に何か役割があるって思って今の発言をしたの?」
「そ、それは・・・何かはあると思ったからだが・・・」
「今言ったようにそんなことはもうないけれど、そもそもを言うとアッシュがこうした方がいいんじゃないかみたいにこっちに言ってきたことなんてないじゃん。それを踏まえて言わせてもらうけど、旦那様達と一緒に行ってこんなことをした方がいいとかって言うこともそうだけど、仲良くしなきゃいけないみたいな気持ちって少しでもあった?」
「っ・・・そ、それは・・・」
「・・・そこで嘘や取り繕うためでも、それらしいことが言えないのは良くない事なんだけどな~・・・ほら、公爵に聞かれたでしょ?大した理由もなく言い出したことなんだってさ」
「っ・・・!」
そんな状態を気に止める事なく話を進めるくのいちだが、毎度のごとく考えがないと明らかにした上で公爵の方を見ると手を顔に当て見ていられないと言った姿があって、アッシュはひきつった表情を浮かべた。自分の失態に考えなしの姿を今まさに父親に見せてしまったことに。
「そ、そのように言うことはないではないですか・・・そちらからして言わねばならない事だったかもしれませぬが、それでもルークの事を少しは気遣ってくれても・・・」
「気遣えとおっしゃいますが、アッシュはこちらに引き込む為に取った手段の事もあるでしょうが我々の事を嫌っていたと言うのはナタリア様もお聞きしていた筈です。そんな我々の元に自ら来るというのであれば、それ相応の理由があるものと思って聞いたのですが・・・そういった理由がないばかりか、キムラスカにいることなく自由でいられる時間を求めるのみといった発言を聞けばこちらも呆れるという物です」
「そっ、それは・・・」
その姿にナタリアが見ていられないといったようにフォローに入ってくるが、感情のみでの声に対して冷たいどころではなく冷徹に返していくくのいちに言葉を返せなかった。下手な言葉など返すだけ無駄だと感じさせる話し方に。









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