軍師と女忍、押さえ付ける

「・・・浮かない気持ちになるのは理解出来ますが、アッシュに複雑な感情を一切持たれないままに接されたいという考えを持つのはやめておくべきかと思われます。彼自身はそういった感情に考えは抱いていないと否定はするでしょうが、自分が被害者であると言った気持ちからの考えを今から全て取っ払うことは最早不可能でしょう。例え丞相の策により幾分かの改善は見られてもです」
「・・・その幾分かが出来るだけ改善の割合が大きいことを願いたいが、やはり我らがどうにかせねばならぬということか・・・」
そんな姿に厳しい言葉と気遣った言葉を共にかけるくのいちに公爵は苦々しげながらも納得するが、そこで一つくのいちは神妙な様子で頷く。
「・・・気休めではありますが、これよりの話し合いで私達にアッシュの怒りが向くような言い方をさせていただきます」
「・・・怒りを誘発すると言うのか?それでよいのか、そちらは?」
「もう余程でなければこちらとアッシュは直接関わるような事も無いでしょうし、怒りの感情が内に向けられるのはそちらも望むところではないでしょう。それにそのような怒りは直接こちらに向けられなければ実害はありませんし、アッシュも流石に感情に任せてこちらに行動を仕掛けてはこないでしょうから心配はいりません」
「・・・では頼む。そちらだけに頼むのは申し訳無い気持ちになるがな・・・」
「いえ・・・では屋敷に参りましょう」
「あぁ・・・」
そこからくのいちが恨みは自分達に向けるようにすると笑顔を浮かべながら言うと、公爵はそうすることを力なく頭を下げて頼み屋敷の方へ向かう。人頼みにすることを心苦しく思うといったよう。









・・・それで公爵と共にファブレ邸に入ったくのいちは二人がルークの私室にいることを聞いた後、話が済むまでは近付かないようにと人払いを心苦しくがしてから私室の方へと向かった。



「・・・もう明日以降、丞相達に付いていこうというように口を出すな・・・ですか・・・」
「うむ・・・今日は話の中身が中身故に人払いをして我らは話をしたが、明日は兵であったりも含めて人を配置して会談の事を話をする予定だ。そして明日は丞相達がバチカルを発つ日になるが、ルークとして戻ったからにはしばらくの間はこの屋敷の生活に慣れてもらいたいと思っての事だ」
「それは・・・確かに言いたいことは分かりますが・・・俺、いえ私も付いていって良いのではないのですか・・・?」
「私もそう思いますし、それなら私も付いていきたいですわ叔父様・・・」
「・・・やはりそのように言うか・・・」
・・・それで屋敷で待機をするようにとの話をし終えるのだが、アッシュとナタリアが付いていく事についてを切り出した事に公爵はそっと眉間にシワを寄せる。
「・・・ナタリア様はまだよろしいが、ルークは旅の間あまり丞相達との仲が良くなかったのを承知で何故行きたいと言う?もしやまだ自由に行動したいなどというだけではあるまい?」
「そ、それは・・・これまで共に行動してきたのですから、私にも何かやれることはないかと思いまして・・・」
「・・・やはり、か・・・」
それでどういった考えからかを聞く公爵だが、動揺しつつやることがあるのではとアッシュが口にした事に口内にだけ響く小ささで呟く。予想通りというか、まだ自由でありたいと言った気持ちがありありと見える様子に。










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