軍師と女忍、押さえ付ける

・・・そう、ナタリアの事である。一応というかちゃんと孔明もナタリアの事についてはインゴベルト達に策を授けておいた。ただ孔明達はナタリアには直接会って話はしておらず、あくまでインゴベルト達だけがナタリアと話をしたのみだ。

なら何故そんなことをしているのかと言えば、ナタリア自身もアッシュ同様に全てを話すわけにはいかないからだ。主な理由は二つ・・・まず一つは本物のナタリアとの入れ換えの件を本人に伝えないようにするためだ。

これに関してはもしもの保険のことを考えれば、当人が知っていることは望ましくない上で下手にその事を知って暴走した考えを持たれる事を阻止するためである。ナタリアの性格上単にその事を知らされれば腹芸が出来ないこともあるが、何より危険な可能性はそれを悟られ誰かにぶちまける事だ。

ナタリアは良くも悪くも・・・と言っても悪い部分の方が大きいが、明け透けな人物だ。その上で自分にはやましいことなどないと本気で思っているからこそ、今までその態度を貫いてこられた。だがそれはあくまでも秘密にしなければならないことをインゴベルト達から任された訳ではなく、ただ王女として任された秘密にしなくてもよい仕事をナタリアが単にこなしてきたからこそそう出来たのだ。

だがそういった事ばかりしてきたことが秘するが花という概念とは無縁の考えを作り出し、秘密を溜め込めないという性質になってしまった・・・そんなナタリアが自分の出生の秘密を知った上で様々な策を聞かされ、黙っていられるかと確信を持って言えるかと言えばまず無理とは言わないにしても相当に荷が重いと言えるだろう。

・・・誰かを頼ることが悪いこととは言わない。だが人を疑うことに長けていないナタリアがもし悪意を隠したまま笑顔を浮かべられるような人物を信じ、秘密にせねばならないことを話したならそれこそ取り返しのつかない事態になりかねない・・・あくまで今は一例だけを挙げたに過ぎないが、そう言った懸念がある為にナタリアには話をするのは止めた方がいいとの考えがある。



・・・そしてもう一つの理由だが、ナタリアに真実を伝えない方がその行動の抑制をしやすいと考えたからである。

一つ目の理由に連なるが、ナタリアは秘密を守るのには向いていない性格であり、同時に行動力はインゴベルトに逆らってまでケセドニアにまで単独で向かうほどに高い。それ故に自身の秘密もそうであるが、アッシュ関連に関してをインゴベルト達と同じ立場から行動するとなった際・・・最も有り得てはならない展開として、秘密を守る事に苦痛を感じた上でアッシュに全てを明かしてしまう展開である。

もしそうなってしまえば全てが台無しになってしまうことは避けられなくなるだろう・・・主に怒りに震えるアッシュが自分もそうだが、ナタリアまでもを巻き込んで気に食わないことをさせようとしたことに関して。

ただ一応ナタリアも事情が事情な為にそこまで安易な行動に出ない可能性もあるが、ナタリアが秘密に出来るかどうかの可能性と天秤にかけるにはあまりにも秘密の数に規模が大きすぎる。ナタリアの勝手な判断でここまで言っていいだろうというような自分基準での判断が信用出来るかもそうだが、一度堰を切ってしまえばアッシュがまだ何かないのかと聞いた時にボロボロと口にしていくのはまず避けられないだろう。

そう考えればこそ、ナタリアには重大な部分については知らせない方がいいとなったのだ。それを聞かせて話を漏らす可能性があるならいっそ知らせない方が話を進めやすいということで。











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