軍師と女忍、押さえ付ける

「それではルーク、そなたは一先ずクリムゾンと共に屋敷に戻るがよい。気持ちとしてはすぐに屋敷に戻りたくないであろうことは察しはするが、それでもいずれは戻らねばならぬ身・・・何、心配はいらぬ。クリムゾンの言うことに従い、しばらくは記憶を取り戻したがその衝撃により混乱しているといったように大人しく振る舞えばよい。ある程度ならクリムゾンがフォローしてくれるだろう」
「・・・はい、分かりました・・・」
それでインゴベルトがアッシュに向けて屋敷に戻るよう対策を共に添えて口にした事に、反論出来ずに力なく頷くしか出来なかった。


















・・・それで孔明達は部屋に案内するとの事でアッシュと別れ、謁見の間から出た。その上でしばらく部屋で待機していた孔明達だったが、呼び出しに来た兵士により会議室へと案内されることとなった。



「・・・再度このような形で呼び出してすまぬな」
「いえ、用件は察していますのでお気になさらないでください」
「そう言ってもらえると助かる」
会議室の奥の方に公爵を横につけ座っていたインゴベルトは孔明達に軽い謝罪を向けるが、気にしないようにと口にされた返しに軽く頷く。
「まずは先に礼を言わせてもらおう・・・そなたのおかげで無事にアッシュを元の位置に戻すことに成功した」
「いえ、お二人の尽力があってこそです。私はあくまでも策を授けたまでの事で、それをうまく実践出来たのは私ではありません」
「そうは言うが、そなたが一連の流れに策を提案しなければこのようにすんなりとあの二人をどうにかするなど我々には無理だっただろう。そうではないか、クリムゾン?」
「はっ、その通りです。丞相に行動していただかなければ今頃どのようになっていたか・・・」
それでインゴベルトは礼を言うといったように頭を下げ、公爵もまた同意だというように返す。



・・・そう。このキムラスカでの一連の流れに関しては、元々インゴベルト達・・・いや、正確には孔明がこうしてはどうかと発案したものだ。

あくまで何も孔明からの話がなかったかのよう、それでいてあたかも初めて話をしたようにインゴベルト達が振る舞っていたのは、アッシュに孔明からの進言があったからこその判断だと思わせないようにするためである。今までのアッシュの事を考えれば、孔明の発案というだけで反対だったり不満をぶちまけてくるだろうからだ。

その上で孔明達もつい先程話を聞いたように振る舞っていたのだが、そこに一つ付け加えるべきことがある。それは・・・



「そう言っていただくなら慎んで受け取らせていただきますが、ナタリア様は大丈夫だったのでしょうか?話をした時もそうですが、陛下達の思惑に気付かれたような様子はありましたか?」
「それは心配はない。話をした際はその中身の重さに終始圧されたようになっていて、とても話に疑いを持っていたとも思ってなかっただろう様子の上で、先程の場でアッシュの事を直に見て話をしたことでその時の話が嘘ではなかったことは確信したであろう。今頃はアッシュが本物のルークであることを確信出来たのもあり、アッシュの側にいるとクリムゾンより報告が来ている。そうだな?」
「はっ。報告の為に屋敷に一度戻った後、二人でいたいと言われました。その際にこの場での会合に顔を出される可能性を考慮し、敢えて屋敷にいてもらいました」
「ふむ・・・アッシュに対して大小様々に聞きたいことはあるでしょうが、話の本筋はもう疑ってはおられないという見方が出来るということですか」
孔明はその言葉を受け取りつつナタリアについてを聞くと、二人から返ってきた概ね問題ないだろうとの答えに納得した様子を浮かべた。









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