軍師と女忍、押さえ付ける

「故にこそ、そなたには自覚を持ってほしいと言いたいのだ。ナタリアの秘密を言わないのは確かに情もあるが、それを言ってはならぬという部分もある。だがだからと言って情に流され全ての判断を誤るような事をするのは許されぬ立場にある・・・それは分かるな?」
「は、はいそれは・・・」
「そう理解しているならよい、と言いたいが・・・そなたがナタリアにどのような態度を取るかの基準が分からぬ事もそうではあるが、今までの丞相達との道中での話を聞く限りではそなたが我々に何らかの不満があれば、キムラスカから逃げ出しかねん可能性も有り得ぬ事ではないという考えがある」
「なっ・・・!?」
そんなナタリアの可能性についてを自覚した上で行動することと同時に、逃げ出すことも有り得ると考えているとのインゴベルトの言葉にアッシュは絶句した。そんな風に思われているのかと。
「あのルークを殺すなら戻ると決めて、自分もちゃんと決意を固めてきた。だからそのような心配はないし、大丈夫だ・・・大方そのように思っているのだろう、そなたは。だがこのような言い方は不本意に思うだろうが、それだけ我々はそなたの事を危惧しているということだ。そしてそれに歯止めをかけるには並大抵の事では無理だと我々は考えた我々は、もしそなたがキムラスカから何らかの動機により抜け出した場合・・・ナタリアの事実を明らかにすることとする」
「っ!?」
「ナタリアは関係無いと言いたい気持ちだろうが、こちらとしてはナタリアの抑止をすることもそうだがそなたをキムラスカに引き留める為に手段を選んでいられぬからこういった結論を出したのだ。無論、そのようなことを言えばそなたらだけではなく我々も多大な被害を受けることになる。ナタリアの事実を最近になって知ったとは言え、そんなことを明かせば醜聞になるのは間違いないからな」
「成程・・・そのような事になることを覚悟の上だということですか。この方が逃げ出せばナタリア様も含めて、キムラスカが一大事になるからこそ自分達が苦境に陥るような事になってもそうならないようにするために動くと・・・私に言っていただければまた何か別の手段を講じたのですが・・・」
更に続ける一種の自爆になりかねないインゴベルトの案にアッシュが絶句する中、孔明が自分が案を出しても良かったと羽扇を出して口元に当てながら憂うように言う。
「いや、今までも散々丞相に助けてきてもらったのだ。そうしないためにもと我々も自分の考えを持って行動することにした。丞相からすれば愚行かもしれぬが、これは我々の判断だ」
「そうですか・・・それなら我々から何かを言えることはありませんね」
「っ・・・!」
しかしインゴベルトの迷いを見せる事のない答えに孔明はあっさりと引き下がるが、その答えにアッシュはまたひきつらせたように息を呑む。この瞬間の孔明の発言は言い換えれば、孔明がインゴベルトの発言を容認して変えようと動くつもりがない・・・つまりはキムラスカに戻ってもインゴベルトの言ったことが変えられることはないのだということに。
「・・・敢えてもう一度だけこの名で呼ぼう、アッシュよ。我々はそなたを再び迎え入れる用意をした。そなたにとって本意か不本意か、その事は置いておいてだ・・・それらについて大いに不満があるのは今までの態度で分かったが、その事について不服の申し立てをするだけならまだしもルークに戻らないと決断するのなら・・・そなたをアッシュとして処刑する」
「っ!?」
そんな中でインゴベルトが王としての威圧を滲ませながら呼び名を『アッシュ』と言い換えながら口にした言葉に、今までで一番の驚愕を表情に見せた。処刑との言葉まで出てきた事に。









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