軍師と女忍、想定外の事態に合う

『・・・もう我は消える。頼む・・・我を地核から解放してほしい・・・』
「っ・・・ルークから光が消えて、力なく倒れこんだ・・・ローレライは言葉通り消えたのでしょうが、今はそれを深く論ずる暇はありません・・・すみませんがシンクはそのままルークを背負ってアルビオールの中に入ってください。まずは当初の予定通りアルビオールでここを脱出し、シェリダンへと戻ります」
「分かりました!」
そしてもう最後とルークから光が失われ地面に倒れこもうとした所をシンクが急いで前に出て体を抱え込み、孔明は気を取り直して指示を出すとシンクの頷きを皮切りに一斉にアルビオールへと乗り込んでいく。









・・・ローレライが現れるという予定外の事こそあったが、アルビオールはその身を大空へと浮かせて外殻大地上へと飛び立った。



「・・・丞相、あれが本当にローレライだと思いますか?それにあの言葉通りだとしても、ローレライを解放するというのですか・・・?」
「そうですね・・・」
それでシェリダンに向かう途中のアルビオールの中、ルークを横に寝かせたシンクは前の座席に座る孔明へとどうするかを問い掛けると考え込む様子を浮かべる。
「・・・まずはシェリダンに戻って報告してから、バチカルを始めとして各国をアルビオールで回ります。ローレライの事も含めて報告するために・・・そしてその際には私はローレライの解放を勧めたいと思います」
「・・・何故ですか?」
それで考えをまとめた孔明が対応についてと解放を勧めると切り出したことに、シンクもそうだが孔明の隣に座っていたフリングスも何故という目を向ける。あんな不審な存在を解放するのかと。
「確かにあれが本物のローレライではなく、何か良からぬ事を企んでいる存在といった可能性は否定は出来ません。しかし同時にあれがローレライであり本当にただ地核からの解放を望んでいた、という可能性もまた否定は出来ません。この事に関してはつい先程に起きたばかりであまりにもあの存在に関する情報が不足していることからやむを得ませんが・・・だからと言って彼を放っておく場合、ある危険性が生じます。それはルークもそうですが、アッシュにも先程のような形でローレライが何らかのきっかけ次第で取りつき、妙な行動を起こす可能性があることです」
「それは・・・」
「ローレライと言ったあの存在がこちらの時期を見計らってくれるならまだしも、全く予期していない時でありかつ最悪の時にそのような事をすれば我々の目論見が全て破綻しかねません。そして考えうる中でも最も最悪な可能性は全てが終わった後のダアトで事が起きてしまい、なし崩しにローレライが音譜帯に行ったことから事実がアッシュに知れ渡る事です」
「っ、そうなれば・・・」
「即刻の開戦とまではいかずとも、アッシュが我々への不審を表に現すのは間違いないでしょう。無論これはあくまで可能性の話であり絶対に起きるとは限ったことではありませんが、だからと言って絶対に大丈夫な時にローレライが行動を起こさないとは限りません・・・確かに絶対に安全だとの保証はありませんが、だからと言ってこの問題を先送りにすることの方が問題となる可能性を考慮して動くべきだと私は言っているのです」
「・・・そういうことですか・・・」
だが孔明は迷いを見せることなくデメリットがいかなものか・・・それを考えた上で踏み込む方がまだいいと言い切るその姿に、シンクも真剣にその言葉を受け止める。そうしなくてはならない理由があるのだと。









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