軍師、頭を抱える

「・・・丞相!」
「・・・これは一体、どういうことでしょうか?」
それで奥へと進んで見た光景に合わせ、かかってきた声に孔明は理解出来ない・・・いや、したくないとばかりに盛大に眉をしかめる。ティアが自身が連れてきた兵達とヴァンの隣に対峙するよう離れていて、ティアが孔明の顔を見て驚愕して声を上げた事実に。
「・・・すみません、コーメイ・・・実は先程ティアを連れて彼らがこちらに来たんですが、ヴァンがそれを見て彼らからティアの手を引いて引き剥がしたんです・・・それでヴァン達と彼らの対立という図式になっていたんですが、僕では彼らをうまく説得出来ず・・・」
「それで今に至る、と言うわけですか」
「そうなります・・・」
後ろに付いてきていたイオンが申し訳無いとその状況に至るまでについてを説明して頭を下げる様子に、孔明は羽扇で口元を隠しながら兵達の前へと出る。
「・・・どういうつもりでしょうか、謡将?」
「・・・すみません、丞相。ですが私には理由に心当たりもなく、ティアも悪意があってあのような事をしたわけではありません。ですからせめて、連行という形だけでも止めてはもらえないかと思いこうしたのです」
「・・・兄さん・・・」
「・・・麗しい兄弟愛について進んで咎めようと思うほど私は薄情ではないと思っていますが、私情であろうと大義があろうと貴殿方二人によって多大な問題が起こっていることを理解して行動しているのですか?貴殿方は」
「「っ・・・!」」
そのまま訳を問う孔明にヴァンはたまらず見ていられなかった為と言ってティアは敬愛する兄を見る視線に変わるが、冷ややかにそんな場面を批難する孔明に二人はすぐに息を詰まらせる。空気も何も考えられていないと言われ。
「・・・とは言え、ここでこれ以上我々が争うような事をしても港の皆さんの迷惑になるだけです。一先ずはティア=グランツの連行に関しては謡将の望むよう、止めておきましょう。ですがティア=グランツが逃げ出した場合もそうですが、貴方が逃がした場合も責任を取っていただきますが・・・よろしいですね、二人とも?」
「・・・それほどの譲歩となれば、これ以上異を唱えるとそれこそ私共々ティアの連行に取り掛かられても文句は言えないでしょうね・・・」
「・・・分かりました、丞相・・・私は大人しく付いていきます・・・」
しかし孔明が仕方無いとばかりに条件付きで許可を出せば、二人は共に苦い顔のままで頷く。欲を言うならそれ以上の状況の改善が欲しかったとばかりに。
「・・・じゃあ話がついたところで旦那様~、コーラル城でアッシュと戦ったんですかい?整備士の人を連れて帰ってきたにしちゃ、随分と兵士もこざっぱりしてるように見えるっすけど」
「いえ、私が整備士の方の元に来た時には誰もいませんでした。そこで整備士の方に話を聞いたのですが、どうやら狙いの導師にルーク殿ではなく私が来たと知ってすぐに退却したそうです。ですから戦うことはありませんでしたよ」
「そうなんっすね。何はともあれ、旦那様が無事でよかった~」
そんな空気を変えようとしてかせずか横でルーク達と共に様子を見ていたくのいちが話に入り、孔明の答えにホッとしたように笑みを浮かべる。
「・・・とりあえず、皆さんはゆっくりと休憩されてください。整備士の方はこの通り無事ですが、どうしても船の修理にはしばらく時間がかかると思われますので」
「んじゃそうすっか、しばらく時間が必要だってんならしゃあねぇしよ」
孔明はそんなくのいちに微笑み返してから休むように言い、ルークを始めとして一同は頷く。確かに自分達は何も出来ないために。









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