軍師、頭を抱える

「まぁそういうわけですから、そろそろ貴方はリグレットの元に行ってここから撤退してください。あまり遅いと導師達の不安を煽ることになりますし、ここにこれ以上貴殿方がいる理由もないでしょうからね」
「そうですね・・・と言うかアッシュがルークを呼び寄せようとした理由についてを聞かなくてもいいのですか?」
「・・・ここに来るまではルークを殺そうとしていたのではと思っていたのですが、その様子では違うようですね」
「えぇ。簡単に言えば私にルークの同調フォンスロットを開くように言ってきたんです・・・彼はそうすればこちらの有利になるとリグレットの説得をしたんですが、彼の性格を考えればそんな理由ではないだろうことは明白ですけどね」
「そしてそれを承知の上で貴殿方はこちらに来た、と言うわけですか」
「えぇ。私達が断ればアッシュがどのような手段を取るのか、下手をすれば港を襲撃した以上の事を平気で起こしかねないという懸念がありましたからね。ですから適当な所で言い訳をつけて撤退しようと考えていたんです。勿論同調フォンスロットを開くつもりなどありませんでしたけど」
「まぁその方がいいでしょう・・・アッシュがどんなつもりなのかは分かりませんが、素直に言うことを聞いて上げる理由もありません。それに彼がここに来ていない以上、そうしようにも出来ない状況ですからね」
それで孔明は戻るようにと言うがアッシュの目的についてを言うディストに、専門用語らしき単語が出てきても何ら動揺することなく受け入れる。
「そうですね・・・では私はリグレットの元に向かいますので、丞相はこのまま奥に進んで下さい。整備士はそちらにいますので」
「分かりました・・・では何かあったらくのいちに分かるように合図をしてください。彼女に話をしに行ってもらいますから」
「分かりました・・・では失礼します」
そして同意してから今度こそ戻ると言い出すディストに孔明はくのいちへの接触方法について言い、別れの声を残して飛んで去っていく姿を見送る。そして一人になった所で孔明ははぁ、と深くタメ息を吐く。
「・・・つくづく何て事をしてくれたのでしょうね、アッシュは・・・起きてしまったことは仕方ありませんが、こちらに責任の追求が来ることだけは避けねばなりませんね・・・本当に・・・」
そのまま常の孔明では見せることのない心底からの疲れが滲んだ声で、アッシュに対しての半ば恨み節に近い事を口にする・・・だがそれも当然と言えば当然であった。アッシュはおそらくどころかほぼ間違いなく自分の好き勝手は許される立場にあるとでも思っているのだろうが、その後始末をするのは孔明に詠師陣なのだ。例え後に全て、その責任を取ってもらうにしてもその苦労をそれまで背負わされる身になるために・・・


















・・・それから気を取り直した孔明は兵を引き連れ先を進み、一人放置される形で地面に倒れこんでいた整備士の身柄の確保に成功してカイツールの港に戻っていった。



「・・・コーメイ!戻ってきたのですね!」
「導師・・・わざわざこちらでお待ちになっていたのですか?」
それで港の入口に来た所でイオンとアニスの二人に出迎えられる形になった孔明は、大きく声を上げるイオンに対して挨拶を交わすより先に何故待機していたのかと問う。
「すみません、まずは奥に来てくれませんか!?貴方が戻ってきたことを知れば事態も収まる筈です!」
「・・・分かりました、すぐに向かいます」
だが焦ったように返してくるイオンにそれ以上の追求をせずに孔明は港の奥へ向かうと頷く。何かあったことは明白な為に。










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