女忍、感じ入る

「一先ずはご苦労様でした・・・貴女のおかげでパッセージリングの操作も無事に行うことが出来ました。身体的にキツい役目でしたでしょうが、これで以降の流れも問題なく進むでしょう」
「いえ、これも自分に課せられた役目だと認識していますので」
孔明はそのまま慰問と言ったようティアに礼と共に頭を下げると、兵士として凛とした顔を見せるように返す。
「ただその代償として今の貴女の体には想像を絶するような相当な負担がかかっているともお聞きしました・・・現在の体調はどうですか?ディストの薬によって多少は体の調子はマシという程度にはなってはいるものの、相当な痛みがあるとの事ですが」
「その心配はありません。この通り私は普通に活動出来ています」
「ティア、私が聞いているのは活動出来るかどうかではありません。貴女の体の痛みがどれほどのものか、その事を聞いているのです。心を奮い立たせて貴女がその痛みに耐えているというのは聞いていますが、どのような痛みであるかの具体的な答えを」
「・・・それは・・・」
孔明はそんなティアに体を案じるような問いを向けると、平然としたような声で返すが望んだ答えではないと正確に聞きたいことを告げると途端に答えにくそうにティアは視線を反らす。
「・・・正直な所を申し上げるなら、薬が無かったならこうして動けていたかと言われるとそう出来ている自信はありません・・・今も痛みが無いとは言い切れませんが、それでもこうして動けるだけいいと言えるレベルであるとしか・・・」
「成程・・・薬があってもそれだけの負担があると言うことですか」
それでも相手が孔明な為に嘘をつかずに正直な自分の体についてをティアは言いにくそうに口にし、その答えに納得の声を上げる。
「・・・やはり貴女の体の状態についてを考えると、ダアトに戻っていただいた方がいいでしょうか」
「っ、私は大丈夫です!」
「そういうように貴女が言うだろうという予測については妻から聞いていました。ですが貴女がそう気持ちを奮い立たせてくれる気概は買いますが、これ以降パッセージリングで貴女の手を借りるような事が無いこともありますが戦闘自体も不測の事態がなければ起き得ません。そしてその戦闘も我々の側の六神将に神託の盾がいて謡将達ももういない以上、不測の事態を起こすような輩も精々野盗であったりアリエッタの言うことも聞かないか彼女がいない時に襲い掛かってくるような魔物くらいでしょう。そう考えれば貴女が気を張らなければならないような相手はまずいないということです」
「そ、それは・・・そうかもしれませんが・・・」
「それに貴女の体についても調べなければなりません」
「えっ・・・?」
その答えに孔明は真剣にダアトへ戻ってもらうことを口にすると案の定ティアは食い下がろうとするが、体を調べるとの言葉に途端に戸惑う。
「貴女はディストに容態を調べてもらい薬をもらったから大丈夫だなどと思っているかもしれないでしょうが、話を聞く限りではあくまでディスト一人が限られた環境に物資の中で行った応急措置のような物でしょう。現にケテルブルクは彼の実家も含めて医学であったり何らの研究を行っているような特色のある場所ではないとの事ですからね・・・その事を考えればもしもの事態を防ぐ為にも、ダアトに帰ってディストの配下の研究員達に貴女の具合についてを改善してもらう研究に励んでいただくと共に休息していただいた方がよいと思ったのですよ」
「っ・・・」
そんな何故と言った態度に対してその疑問を言い当てつつ慎重にその身を案じているといった話をする孔明に、ティアは息を呑む。自分の体を案じていると孔明が言っていることもあるが、同時に自分がそれを無視してもしもの事態が起きる可能性についても有り得ると認識してしまった為に。









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