軍師、移動する

「そういった形でアッシュが爆発することもまた良くない事ではあるでしょうが、そこから問題になるのはアッシュの事実をナタリア様に知られることになります」
「事実を知られる、とは・・・」
「お二人は黙っておられるでしょうが、アッシュは不意にその事を口にしかねません。言うなれば俺はあの屑じゃねぇと言ったように怒りに身を任せて事実をナタリア様にぶちまけて、自分をルーク様と同じように扱わないようにと言い出しかねない形でです」
「「っ!?」」
更にいかな危険が起き得るのか・・・孔明が口にしたその可能性に一気に二人は表情をひきつらせた。一時の感情で全てを台無しにしかねないアッシュの危険性を有り得ないと否定出来ない様子で。
「そしてもしナタリア様にアッシュへこう言ったことを言わないようにと忠告したとしても、その言葉を忠実に守られるかというのはあまり期待されない方がよろしいかと思われます。陛下の制止を聞かれずにケセドニアまで来られた意志の強さに、これからお二人は婚約者としてであったり結婚して夫婦という立場になることを考えると二人だけの時間というものはどうしても出てきます・・・それらを考えればナタリア様が確実に黙っていられるとは私からはとても保証出来る物ではありません」
「た、確かに・・・特に屋敷に何度もルークの記憶を確かめに来たことを考えれば、いきなり記憶を取り戻して別人のようになったアッシュの事を訝しむのは間違いないでしょうから・・・その事についてをナタリア様は聞きたがるでしょうし、二人だけの時間は私がいない時を狙われてしまえば屋敷の者では屋敷に入るのを止めることは出来ないでしょう・・・」
「うぅむ・・・そう考えれば確かに丞相の言われるよう、ナタリアにも事実を明かした上で協力をさせた方がまだ安全ということか・・・」
その上でナタリアが自分達の思う通りに動いてくれないだろうと述べる孔明に、公爵とインゴベルトは揃って納得する。その気性を考えると、決してナタリアが大丈夫と言えないことに。
「だがそれでナタリアに何をさせようというのだ?大爆発の事を考えると、とても事は簡単なようには思えぬのだが・・・」
しかしそこまで来たからこそ、インゴベルトはどうして今の話をしたのかの本題についてを孔明に尋ねる。結局話をしたものの、その狙いが良く分からないといったように・・・そんな姿に羽扇を口元近くに持っていき、孔明は微笑を浮かべた。
「ではお話致しましょう。その狙いについてを・・・」
・・・基本的に孔明は余程追い詰められない限りは勝率が著しく低いだとか、破れかぶれの策を考えることも選ぶこともない。そしてその策も勝つために万全の構えを取って人前に出すことを前提に出す。

だからこそ今度も孔明は自信を持って策を口にしていく。余程のアクシデントがなければうまくいくとの確信がある、万全の策を・・・









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