軍師、移動する

・・・そのような形でアッシュについてをボロクソにアスターが言っている中、孔明達はタルタロスへと戻り一路バチカルに向けて出港した。



「・・・またアッシュは一人で部屋にこもりきりですね。別にいつも一緒にいなければならない理由はないんですが、ならばこそ多少は気持ちや考えを切り替えるとかして丞相や死霊使い達に接するべきだと思うんですけれどね。後々の為というか、自分の態度を改めるように」
「そうするべき時ではないと感じているからというのもあるでしょうし、別に必要ないからとも考えているからでもあるでしょう。言い換えれば楽をしたいという気持ちに身を委ねていると言ってもいいでしょうね」
「感情のままに悪態をつくことが楽、ですか・・・ヴァンの元にいた時からあの態度が変わってないことを考えると、アッシュはずっと楽をしているということになりますよ。さも自分は苦労ばかりしていると言ったような態度をしていますが」
「フフ・・・」
・・・それでタルタロスの指揮を再びリグレットとマルセルの二人に任せて部屋にて待機することにした一同であるが、その中で孔明と二人で部屋にいるシンクがアッシュについてを口にしていくと孔明はそっと目を閉じながら微笑み返す。その皮肉に彩られて毒づいた言葉に。
「確かに彼が楽しているというように私は口にはしましたが、それは諫めるべき存在がいなかったからです。六神将は身分はともかく格としては神託の盾内では同等の存在として見られてましたから、上の存在というには少しおかしな立場にありますし、仮に貴方達から諫言を向けられたとしても素直になど聞こうとは思わなかったでしょう。その上で謡将の率いる神託の盾以外では顔を知る者もほとんどいないと言った状況となれば、謡将以外にアッシュを諫める事が出来る立場にいる人物はいませんが・・・アッシュを無理に押さえ付けるのは悪手と思ってか、はたまた自分なら暴走しても手綱を握れると過信していたのか・・・謡将は関係性を深くは構成していませんでしたからね。アッシュは自分の部下に弟子といった程度にしか」
「ではヴァンが本当の意味で主と部下の関係を築けていたなら、今のアッシュのあの様子にはならなかったと?」
「えぇ。ですが謡将はそうはしなかったのか、出来なかったのか・・・どちらもあるとは思いますが、どちらかと言えば前者の意味合いが強いと思いますよ。出来ない理由としては単にアッシュにばかり時間をかけるのは謡将の計画を進めるには無理があるからでしょうが、短時間でアッシュに自らの立場を分からせることは謡将なら出来なかった訳はないでしょう・・・洗脳まがいなやり方でね」
「・・・しかしそれをヴァンはやらなかった。そうした方が確実に事を進められただろう筈なのに、と」
「えぇ。それなのにそうしなかったのはアッシュを引き入れた事により、謡将の身内に対する甘さが発揮されたから・・・これに尽きるでしょう。師と弟子という他の者とは違う関係性もあって、アッシュを歪めるような事はしたくないと思ってのことだと思われます」
「歪めたくない、ですか・・・その結果が今に繋がっていると言うこともそうですが、何よりアクゼリュスが消滅する預言が近くなるまでの神託の盾での活動で、ろくにコミュニケーションを他の人間と取ろうとしてなかったって結果が出てるんですが」
「それは当事者であるアッシュの責任問題ですよ。謡将は少なからず貴殿方と仲間意識が出て打ち解けるとでも考えていた可能性は有り得るでしょうが、アッシュが貴殿方に心を開く可能性を考えてはいなかったからこそのあの姿でしょうからね」
「そこはヴァンが迂闊だったってことですか・・・」
そこから孔明が目を開け話を進めていくのだがいかにヴァンが色々と抜けているのかに、アッシュが自分から何かをしようとしていなかったのか・・・それらを聞いてシンクには呆れの様相が浮かんでいた。両者が両者ともに、なんとも言えない事をしていたのだと認知し。









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