軍師、移動する

「今の自分の姿は今はまだ自由だから、まだ何もしなくていい・・・そんなものはただの甘え。そしてそれを自覚していないし、指摘されればただ怒り狂いそれを直そうともしない・・・あれでキムラスカに戻って大丈夫だ等と思っているのでしょうかねぇ・・・そしてそういった部分を丞相は敢えて放置していると考えすらしない・・・イヒヒ、あれで丞相と対等になれるつもりなのでしょうかねぇ・・・」
更に続いていくアッシュに対する下に見た言葉の数々であるが、その中で孔明のことがアスターの口から出てくる。明らかにアッシュより評価がされたような形で。



・・・アスターからしてみれば、孔明という人物は才覚の塊と言ってもいい人物であった。それと同時に清廉潔白なだけでなく、あまり人聞きの良くないような手法に手を染めることも危険を省みずに行動を行うその判断力を買ってもいた。

実際、孔明からもたらされた情報や取引に関しては先程話したようにアスター自身も大きく感謝をしている。預言による戦争など望んでいなかったから預言通りにならない道程に運んでくれた事もそうだし、ケセドニアに自分の利を得させてくれたことをだ。

ただそんな大人物と比較してみれば、明らかにアッシュは貧弱な存在としかアスターからは見えなかった。いいように手のひらで転がされている事にも気付かず、ただ自分はお前と対等以上の存在なのだと威嚇して疑ってないといった様子は。

それに・・・



「そしておそらく分かってないのでしょうね・・・ここでの先程の話は預言に外れた戦争でも起こさせないよう、釘を刺すという意味合いが含まれていたことも・・・まぁあの様子では特にそういった事など考えていなかったでしょうし、ここでの事をインゴベルト陛下達が聞けば少なからずそういったように考えて動いてくれるでしょうね・・・取りあえずはすぐにあの方が王座に着くことはないでしょうが、あの姿を見れただけでよしとしますか」
それで孔明の狙いについてを軽く口にしつつこれ以上はいいだろうと、アッシュについてを口にすることは止めようとアスターは漏らす。



・・・孔明の狙いが戦争についてをある程度抑制するためにここに来たという部分も大きいのだという孔明の考えを、全く察そうとしていないのもまた愚かしいと思えた部分とアスターは感じていた。

預言に詠まれた戦争を避けることは最低限必要な事だと位はアッシュも分かっているだろうが、だからと言って預言に詠まれてない戦争を起こしても問題はないだとか思われても孔明やアスター達からすれば困るのだ。預言に詠まれてないからという考えを抜け穴にしたり、盾にされるような事をされても。

だが先程の場にはアスターもそうだしジェイドにフリングスもいて、その事をインゴベルト達にも伝えるとなっている・・・もしこの状況でアッシュがマルクトが気に入らないと戦争を吹っ掛けるとなったなら、インゴベルト達は余程の事がないなら戦争に踏み切ろうとは思わないだろう。それこそ様々な要因から戦争に勝っても相当にうまく、それでいて慎重にいかなければ勝者が得られる旨味など勝ったという満足感くらいしか得られないだろうために。

ただアッシュはそういった事を考えず、ただ孔明の言葉を言葉としてしか受け止めてなく反発心ばかりで行動している・・・その姿があまりにもアスターからすれば愚かしく、それでいて今後深く関わりたくない物としか見えなかった。商人として、一個人として見て・・・あまりにも短慮に過ぎるものであった為に・・・









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