軍師、移動する

「ただ病がどちらの状況からもたらされるかはさておきとして、マルクトの被害は相当の物になることは想像に難くありませんし預言保守派はそれこそ精々エンゲーブの作物が取れればいいというくらいにしか援助をしようとはしないでしょう。ですが皇帝という指揮者がいないか、もしくはキムラスカにダアトの間に合わせの指揮官が来る程度の処置くらいしかないでしょうから、エンゲーブの機能の回復もそこまで早くはないでしょうね」
「そしてそんな状態など我々としても望ましくない、と言うことです。そういった状態であれば食料の安定した供給に時間がかかることになりますが、最もな問題として何があるかとなれば病を持ち込む人物がこのケセドニアを通る可能性が極めて高いことになります」
「それは、確かに貴殿方にとって大きな問題と言えるでしょうね。特にエンゲーブからの食料の事を考えれば人の出入りを制限する訳にはいかないでしょうし、人の集まる地ですから病が感染すればもう止めることが出来なくなる・・・そう考えればケセドニア側からすれば預言の通りになって欲しくないというのは理解出来ますね」
孔明がその補足にとキムラスカやダアトの取る処置についてを述べ、アスターが病が持ち込まれる可能性の高さを口にするとフリングスは重々にその言葉を受け止める。それだけの危険性があるなら慎重でいて預言の実現を望まない理由として妥当な物だと。
「・・・おい、わざわざこんな話をしにここに来たのか?それに肝心のキムラスカにもマルクトにも重要な事だという事について話してねぇぞ」
そんな話に今まで黙っていたアッシュだったが、自分の聞きたい部分が聞けてないと苛立ちを浮かべながら口を挟んでくる。
「何、簡単な事です。今までの会話から分かるでしょうが、ダアトの影響力が落ちたケセドニアは商業自治区としての力をつけることになるでしょう。そしてそうなれば交易の関係でキムラスカとマルクトも無関係と言うわけにはいきません。と言ってもダアトの影響が少なくなることから両国の負担は献金額が少なくなることから下がるとは思われますが、だからと言って安穏ともしていられませんよ?何故ならアスター氏も預言の事実を知られている訳ですし、横暴な暴利を吹っ掛けるような事も両国間の戦争も迂闊に起こせないわけですからね」
「・・・それはつまり、ケセドニアにも戦争に関しての抑止力としての役割を貴方は期待していると言うことですか」
「えぇ、その通りです」
そんなアッシュへその訳についてを話していく孔明に、ジェイドはその目的に関してを察したように声を上げると笑顔で肯定する。
「勝手に話をしていたことに、今までそれらを黙っていた事についてはお詫び致します。ですが戦争になってしまえばそれこそ先程言ったような事態になることもあり得ますし、抑止力は必要な事です。特にキムラスカに関しては預言が裏にあったとは言え戦争を間近にしていたということもあって、あまりいい感情をマルクトに持っていないというのは分かるでしょう・・・それはマルクトも似たような物ではあるでしょうが、どちらもどちらと思っておいて構いません。重要なのはキムラスカとマルクトの上層部にケセドニアは事情を知っていると認識してもらうことなんですよ。迂闊な事は出来ないとね」
「確かに事情を第三者が知っていると言うのは大きいと言えば大きいですね。そしてそれを我々は上層部に伝えろ、と」
「そうなります」
そこで軽く頭を下げた後にいかに後の安全の為に必要な事かを話す孔明にジェイドもその意図を掴み、それが間違いでないと頷く。









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