軍師、移動する

「まだ他にも色々とありますがそういったことを踏まえれば、私としても預言保守派達の思惑通りに進んでしまう場合の不利益を考えると良くないと思い丞相の案に乗ったのです」
「他にも色々と、ですか・・・そう聞くと改めて思いますね、キムラスカとマルクトの間で戦争が起こらなくて良かったと・・・」
だからこそそれ以外にも理由はあるが孔明に協力することを決めたと笑顔を見せるアスターに、フリングスは複雑そうに感じ入る。戦争が起きることの是非を。
「本来戦などと言うのは起こすべくして起こすものではありませんからね。戦はあくまでも外交においての手段の一つで、それも出来ることなら最後まで取ると選択するのを避けるべき手段ですが・・・預言保守派からすれば手段が目的になってしまったからこそ、そうなったのです」
「手段が目的、ですか・・・」
「えぇ。ですがそういった場合は手段を主軸に置くからこそ、その目的を達成するために以降の事を軽視する傾向が強いと言えますが・・・この辺りの事は預言でキムラスカの繁栄が詠まれているのだから問題ないと、最初から預言保守派は食料問題であったりその後のマルクトに対しての事など欠片も考えていなかったでしょうね」
「欠片も、ですか・・・」
「預言通りにすれば、戦争にキムラスカが勝てば・・・そうなれば生き残りのマルクトの人々はすぐに従順になるだとか、そうでなくとも力づくで従わせればいいとでも預言保守派の方々は考えていたでしょう。ですがその後に詠まれていた預言の中身から察するに生き残っていたマルクトの方々が、キムラスカやダアトに対して忠誠心など抱いていなかった可能性は高いでしょうね」
「・・・その中身とはもしや、一人の男がキムラスカに病を持ち込むといった中身ですか・・・?」
「えぇ、この預言から二つの可能性が想像出来ます。まず一つはその病はその人物によって作られた病であり、キムラスカやダアトへの復讐の為に持ち込まれた病であること・・・もう一つは戦争が終わってろくにキムラスカやダアトがマルクトを復興させず、劣悪な環境から生まれた疫病を預言に詠まれた人物が持ち込んだという可能性です」
「「「っ!」」」
孔明はその流れから戦を目的とする是非にそこからの詠まれた預言の中身についての推測を挙げていき、ジェイドにフリングスにアッシュの三人はたまらず息を呑んだ・・・孔明の口にした二つの可能性はどちらの可能性であっても、凄絶な物であることには変わりないということに。
「前者に関してはあくまでも預言の中身からもしもの可能性を論じただけですから後者よりは可能性は低いでしょうが、後者に関しては可能性は相当に高いと思われます。これは預言にはキムラスカの勝利が詠まれているとは言え、だからと言ってキムラスカが兵の一人すら損傷さえしないような楽な戦いばかりの訳がないのは数年がかりの戦争になることから軍属である皆様も分かられると思います。それにマルクトの皇帝の首を取るまでに追い詰めるのですから、場所はグランコクマが妥当と見た上で相当な抵抗をマルクト軍はすることになるでしょう。そしてそうなればキムラスカ軍はグランコクマの街に配置されたマルクト軍と敵対しながら進軍しなければなりませんが、その際の被害が大きければ大きいほどに戦争が終わった後にどう復興するかが焦点に上がるでしょう・・・ですがその時のキムラスカやダアトがわざわざマルクトの復興に乗り組むと思われますか?自分達の被害も少なくなく、数年がかりの戦争により大いに国全体が疲弊している中でです」
「・・・まず有り得ないでしょうね。精々エンゲーブの作物をどうにか供給出来る状態にまでは整えようとはするかもしれませんが、それ以上はキムラスカやダアトにとってはメリットはあまりないと言えるでしょうからね。そしてそうなればグランコクマにセントビナーといった所はろくに復興なんて状態になるはずもなく、ろくに環境の整っていない状況では疫病などが発生しても何らおかしくない状態になる・・・と言うことですか」
「そういうことです」
続けて前者はともかくとしてもと言いつつ後者になりうる道筋についてを述べていき、ジェイドもその推測が正しいだろうというように漏らす。まずキムラスカにダアトはマルクトの復興に興味など持たないと言うか、関わらないだろうと。









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