軍師、移動する

「アスター殿の得が何かと言えば、その情報が手に入ることによる事後の対策を練れることです。どちらになってどうなるにせよその情報があるということは各国の中継地点であり、中立地帯で要所でもあるこのケセドニアにおいては様々な意味になりますからね」
「まぁそれは分かります。特に預言通りに戦争になった場合の物流に関しては、何も知らないままに戦争に突入したら色々と面倒になるのは目に見えていますからね。どういったレートに物の値段を上げるかに、手に入りにくくなる物のリストアップだったりと様々に・・・」
孔明はアスターの得は対策が取れることだと言うと、ジェイドは納得はしつつもまだ疑いの視線を向ける。
「ただそれで貴殿方がどのような益があるのかをまだお聞きしていませんが・・・」
「そこに関しては即刻の効果を求めての事ではなく、事態が無事に終わった後でも今のような関係性を多少形が変わっても続けてもらいたいという物ですよ。何しろ先程も言いましたよう、これからの流れでローレライ教団からは人が多数離れていく事は想像に難くありませんからね。ですので全てがうまくいったなら今現在ダアトがケセドニアに払っていただいている献金の額を大幅に下げると同時に、ダアトから離れ行く人々の再就職先の斡旋を行うことを約定したのです・・・何しろその時のダアトはローレライ教団が意味を失ったなら、ケセドニアより見限られてもおかしくない立場にありますからね。ローレライ教団の資金はケセドニアよりの献金が大幅な割合を占めていますから、教団の意味が薄れれば言うことを聞く必要はないと献金自体を拒否されればたちまちダアトは苦境に陥りますので」
「・・・成程。献金額を下げはするものの資金が全くないと言った事態を避けなければならないと考え、そのような話をしたということですか。ケセドニア側にとっても少なくないメリットを提供する形で、ダアトをただちの苦境に陥らせまいとするために」
「えぇ、そういうことです」
そのままダアトの益は何かと肝心な事を問うジェイドに対し、いかにケセドニアの対応が全てが終わった後のダアトにとって重要か・・・それらを次々語る孔明に、ジェイドもだがフリングスも納得したような面持ちを浮かべる。確かにダアトの立場を考えれば、全く有り得ない事ではないと。
「イヒヒ・・・私としましてはケセドニアにそういった利益があることから、断るような理由などありませんでしたのですぐに協力すると決めたのです。それに丞相達が失敗するということは即ち、預言通りの戦争が数年単位で起こるということになり、武器や防具と言った物の利益こそは上がるでしょうが肝心な問題は食料になります」
「食料・・・ですか?」
「えぇ。マルクト所属である貴殿方も知っての通り世界の食料の大半はエンゲーブからの輸出による物ですが、マルクトが負けるという預言の中身に数年がかりで行われる戦争・・・この二つの事からエンゲーブも戦火に晒される可能性は大いに有り得ることに、下手をすればケセドニアまで食料がキムラスカ軍に襲われるかマルクトが警戒するなりして輸送されなくなる可能性があります。そうなれば食料の値段が上がることもそうですが、何より大詠師のような方々により食料の提供をほぼタダ同然の値段で大量にダアトに卸さなければならない可能性があるのです・・・現に今までもホドのような戦争において食料を優先的にこちらに回してほしいといった要求は向けられてきましたし、それだけの規模の戦争となればダアトの食料が不足することは十分に有り得ます。その時に我々が食料の提供を拒むことは事実上許されないでしょうが、そうなれば利益の損失もそうですがケセドニアが食料不足という事態にもなりかねません。そしてエンゲーブの被害の状況次第では、それこそ全世界規模で見ても食料が足りなくなる事態も全く有り得ない事ではないとも思われます」
「・・・流石にそこまでとなれば貴殿方も商業の事に集中出来なくなる、と言うわけですか・・・」
次にアスターが預言通りにいった場合の食料の問題の事も大いにあるといったことに、フリングスもその中身を重く捉え表情を引き締める。戦争になっていたならケセドニアもあまり良くない事態になっていた可能性もあるのだと、食料の事から認識して。









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