軍師、頭を抱える

「では導師、妻を残して行きますのでこの港に待機すると共に事後処理をお願いします」
「奥さんを、ですか?六神将のアッシュが相手となると、戦力として彼女も共に向かった方がいいと思うのですが・・・」
「戦力としては確かにそうでしょうが、アッシュが再びこの港を襲撃しに来る可能性もないわけではありません。謡将の姿を確認したからこそアッシュは用心の為に撤退しただけで、港の完全なる壊滅もしくは私の動きを察してルーク殿に導師を誘拐に来る可能性もあります。そう考えるなら彼女には私達の身の安全よりお二方に港の警備を担当していただく方がいいと思ったんです」
「僕達だけでなく、港にもですか・・・僕の事だけならともかく、そういうことでしたら彼女の護衛はありがたく受けさせていただきます」
そこからイオンにくのいちを付けることを当人に訳つきで言う孔明に、反論しようとしたがすぐに納得して苦く頷く。
「ありがとうございます。では私達は早速コーラル城まで向かいますので、失礼します」
「旦那様~、ご無事にね~」
話がまとまった所で頭を下げてから兵士達と共に出立していく孔明の後ろ姿に、くのいちが笑顔で手を振る。危険な場に向かうであろう旦那を心配してないのではと思うほどの明るさで。



「ふぅ・・・全く、何が狙いなのでしょうかアッシュは・・・自分の立場がどのようなものであるのか、それを全く考えていないとしか思えませんね・・・」
それで港を出て周りに兵士達しかいない状況の中、孔明は心底からアッシュに対して呆れの声を上げる。
「・・・まぁアッシュの真意は今から向かって聞けば分かることです。おそらく謡将にルーク殿達が来ることに関しては予測はしても、私がここに来ていると知らない彼は私の姿を見れば舐めてかかってくることでしょう。たかが文官程度自分の相手にもならないと思うばかりか、馬鹿にされたと勇んでこちらに来る形でね・・・その時は遠慮なく返り討ちにさせていただきます」
だがすぐに孔明は気持ちを入れ換えアッシュの行動を推測した上で口にする。返り討ちにすると何事もないとばかりの平然とした口調で。















・・・それでコーラル城を目刺し行軍をした孔明達は何事もなく、目的地まで辿り着いた。
「・・・入口での出迎えはなし、ですか。彼の性格なら策も何もなくこちらに突撃してくるかと思ったのですが、この様子なら奥で悠々待機しているといった所でしょうか。それも特に道中で罠も張ることもなく・・・そう予想が出来るのが悲しい所ですね」
・・・元々コーラル城とはファブレが別荘として所有していた城だが、現在のコーラル城は放置されて長い廃墟となっている。
そんな廃墟の入口前から外観を眺めながら孔明は脱力しそうになる気持ちを抑えながら、羽扇で口元を隠す・・・何故孔明が悲しいと言っているのかという理由は、アッシュが考えなしの行動に出ていると分かるからだ。兵法に深く通ずる者として仮にも兵をまとめる立場にいるはずの人間がそういった事を自覚していない。それが例え・・・仮の物だとしてもだ。
「・・・いけませんね、今はその事は気にしても仕方ありません。まずは中に入りましょうか、整備士を助けるためにも・・・行きますよ、皆さん」
しかし気持ちをすぐに入れ替え孔明は中へと歩き出す。兵士達を後ろにつけながら・・・











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