軍師、移動する
「彼は自分が傷付かないよう、それでいて安全圏から物を言える立場から動こうとはしていません。一応は戦いの場となれば戦うことに異はないようですが、それはあくまでその場を切り抜けなければ立場も何もなく死ぬだけ・・・そう理解しているからでしょうが、それはつまり彼は戦場と政治の場を同一視していないのと同義なのですよ」
「同一視・・・ですか?」
「その二つは全くの別物なのではないかと思われているかもしれませんが、他国の使者を用件や人物自体を気に入らなければ殺すといった事例も少なくはありませんでした。それが戦争が近いといった状態であったり、敵国の人間に無配慮でいて無謀な言葉をかけたりすれば尚更の事です」
「・・・そんなことがあったんですか・・・そして死霊使いはそう言ったことを考えてはいないと・・・」
「戦争の前口上を伝えるために来たのなら大佐も気を引き締めるなりなんなりとしていたでしょうが、和平の使者と言うことならと少なからず安穏とした考えがあったことは否定出来ないでしょうね。ですが余裕のない様子を浮かべるよりはそのように構えていた方がいいと言うかもしれませんが、あくまでそれは表向きにだけそう見えるというようにするべきもので決して内心まで気を緩めるべきことではありません。事実ルークを助けて連れてきたのもあって自分なら大丈夫だとタカをくくっていた部分も大いにあったでしょうからね」
「・・・丞相の言ったことにあてはめるなら、もし死霊使いが無礼な言動をしていたならルークだけをさっさと引き剥がしてその事には礼を言うが、それとこれとは話が別・・・と言ったように殺される可能性も預言が無かったなら有り得た、と言うことですか・・・」
「そういうことです」
そこからジェイドがいかな考え方をしているかに加えて、やけに実感のこもった国と国の事の機微にいかに危険が伴われるのか・・・孔明からそれらを聞かされたシンクは真剣にその中身を受け止め、その姿にまた満足そうに微笑んだ。
・・・実際に孔明が言っていることは嘘ではない。国からの使者の態度や発言が気に食わないと切り捨てられたといった事などオールドラントの歴史の中でも少なからず存在しているし、ましてや孔明からしての前世ではそれこそそう言った逸話に事欠かなかった。
そして孔明自身、そういったように自分が一つ誤れば自分だけでなく自分の仲間や君主まで巻き込み、全てが台無しになりかねない場へ連合しないかと使者になったこともあり・・・言葉のみで何人も並び立つ論客達を打ち負かし、圧倒的劣勢をはねのけて自身らの勢力を生かすことに成功したという実績がある。
そんな孔明からしてみればジェイドの行動もそうだが、その覚悟の程はあまりにも生温いというようにしか見えなかった。確かに危険を避け、安全に事を進めるのは重要な事ではある・・・だが国と国の間でのやり取りに関して、絶対的な安全というのは存在はしない。何故かと言えばいくら仲が良かろうと悪かろうとあくまで他国は他の国であり、自国ではないのだ。
ましてや長年敵という間柄であって、一触即発の空気がずっと漂っていた事を踏まえればもう少しジェイドは慎重でいて傲岸不遜な態度を取るべきではなかったと・・・孔明はそう感じていた。端から見れば危ういことこの上ないとしか言えないものだと。
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「同一視・・・ですか?」
「その二つは全くの別物なのではないかと思われているかもしれませんが、他国の使者を用件や人物自体を気に入らなければ殺すといった事例も少なくはありませんでした。それが戦争が近いといった状態であったり、敵国の人間に無配慮でいて無謀な言葉をかけたりすれば尚更の事です」
「・・・そんなことがあったんですか・・・そして死霊使いはそう言ったことを考えてはいないと・・・」
「戦争の前口上を伝えるために来たのなら大佐も気を引き締めるなりなんなりとしていたでしょうが、和平の使者と言うことならと少なからず安穏とした考えがあったことは否定出来ないでしょうね。ですが余裕のない様子を浮かべるよりはそのように構えていた方がいいと言うかもしれませんが、あくまでそれは表向きにだけそう見えるというようにするべきもので決して内心まで気を緩めるべきことではありません。事実ルークを助けて連れてきたのもあって自分なら大丈夫だとタカをくくっていた部分も大いにあったでしょうからね」
「・・・丞相の言ったことにあてはめるなら、もし死霊使いが無礼な言動をしていたならルークだけをさっさと引き剥がしてその事には礼を言うが、それとこれとは話が別・・・と言ったように殺される可能性も預言が無かったなら有り得た、と言うことですか・・・」
「そういうことです」
そこからジェイドがいかな考え方をしているかに加えて、やけに実感のこもった国と国の事の機微にいかに危険が伴われるのか・・・孔明からそれらを聞かされたシンクは真剣にその中身を受け止め、その姿にまた満足そうに微笑んだ。
・・・実際に孔明が言っていることは嘘ではない。国からの使者の態度や発言が気に食わないと切り捨てられたといった事などオールドラントの歴史の中でも少なからず存在しているし、ましてや孔明からしての前世ではそれこそそう言った逸話に事欠かなかった。
そして孔明自身、そういったように自分が一つ誤れば自分だけでなく自分の仲間や君主まで巻き込み、全てが台無しになりかねない場へ連合しないかと使者になったこともあり・・・言葉のみで何人も並び立つ論客達を打ち負かし、圧倒的劣勢をはねのけて自身らの勢力を生かすことに成功したという実績がある。
そんな孔明からしてみればジェイドの行動もそうだが、その覚悟の程はあまりにも生温いというようにしか見えなかった。確かに危険を避け、安全に事を進めるのは重要な事ではある・・・だが国と国の間でのやり取りに関して、絶対的な安全というのは存在はしない。何故かと言えばいくら仲が良かろうと悪かろうとあくまで他国は他の国であり、自国ではないのだ。
ましてや長年敵という間柄であって、一触即発の空気がずっと漂っていた事を踏まえればもう少しジェイドは慎重でいて傲岸不遜な態度を取るべきではなかったと・・・孔明はそう感じていた。端から見れば危ういことこの上ないとしか言えないものだと。
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