軍師、移動する

「そう改めて聞くと、丞相の行動は全てが全て計算ずくと言うわけではないのですね」
「ハッ、全部が全部計算ずくだと?バカらしい・・・だとしたらこうして俺が自分の意志を持っているのは何になる?それにラルゴの事も言ってやがったが、本当に全てを計算ずくで動かせるなら今頃は六神将どころかヴァンにモースも含め、ダアトの全てを掌握していてもおかしくはないはずだ」
「アッシュ・・・貴方は・・・」
「フン、いくら頭がキレようがその程度だということだ・・・俺は休む。用がないなら来るな」
フリングスがしみじみそんな孔明に対して感じたことを口にする中でアッシュは大したことないだろうと言わんばかりに嘲りの言葉を口にし、言いたいことを言ったら気が済んだとばかりに部屋を後にしていく。
「・・・よろしいのですか、あそこまで勝手な事を言われて?」
「構いませんよ、事実ですから」
「あそこまで言われてよく寛容でいられますね。私ではとてもとても・・・」
「なら自分はどういったように行動するのか・・・それを指し示しもしないどころか、まず思考の端にすら浮かべてもいないだろう彼の考えについて一々指摘するのも良くないと考えただけです。その事を聞いたとしても返ってくる言葉は怒声か、不機嫌だとあからさまに私達に見せ付けるように退場する・・・のどちらかでしょうからね」
「・・・歯牙にもかけないというより、同じ土俵で相手にする事自体が間違っていると考えられたと言うわけですか」
アッシュがいなくなりジェイドが試すようでいて挑発するような言葉を向けるが、一切気にした様子もなく平然とアッシュの思考を読みきっていると言った返答をする孔明の姿にどこか面白くなさそうに漏らす。
「大佐・・・」
「・・・すみません、多少失礼が過ぎました。不遜な物言い、申し訳ありませんでした」
「構いません、質問に答えただけですからね」
そんな様子にフリングスが流石にと表情を険しくしてジェイドも謝罪するのだが、これまた気にしていないと平然と孔明は返す。
「そう言っていただける事には感謝はしますが・・・正直な話、あの姿を見た後ではアッシュにキムラスカを任せても大丈夫だなどという気持ちには今はとてもなれません・・・強がりに見栄が先行する様子から見ても、彼が慎重な外交を行ってくれるとはまず・・・」
「少将の懸念も最もになります。今のままの彼の様子でキムラスカの王の座をインゴベルト陛下から譲り受けたなら、彼は外交を行うにあたり自身の気持ちを全面に押し出したやり方を通す可能性が高くなると思われます。一例を挙げるなら相手方がどのように思うかなど関係無く、ただキムラスカの利益だけを追求した要求を向けることも有り得るでしょうね。キムラスカの益が9で相手方の益が1・・・下手をすればそれ以上の割合の不当な交渉を強気な態度で行ってきて、いざとなれば戦争も辞さない・・・と言ったようにしてくることも」
「そんなことは、許されるはずが・・・!」
「えぇ、とても許されるはずがありません。ですが彼が今のまま歳を重ねるのであれば例え周りの制止があろうと、むしろ腰が引けた奴などいらないとばかりにその人物を切り捨てにかかる可能性もあります・・・あくまで一例を出しただけではありますが、今のままの彼であればそういった強気の強行姿勢を崩そうとも見返そうともしない暴君となる可能性は決して否定出来ない物と言えるでしょう」
「っ・・・!」
孔明のあまりにも嫌な方向の推測に、たまらず謝辞を述べつつもアッシュについてを聞いたフリングスは戦慄してしまった・・・今のままならアッシュが最悪な人物となり、マルクトと相対する可能性の一端を聞かされて。









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