軍師、頭を抱える

「主な理由は二つ・・・まず一つは貴方を手放しで信用が出来るような状況ではないからです」
「私が、信用出来ない?何故ですか?」
「貴方なら今この場にティアがいない理由について、更に言うなら私がここに来た理由も併せて分かるのではないですか?」
「っ・・・そうか・・・貴方がこちらに来た理由は、ファブレでの件でと言うことですか・・・そしてティアは今、別で連れていかれていると・・・」
「理解が早くて助かります」
その理由についてを信用という孔明に始めこそ何故と言うヴァンだが、二つの事柄を上げられすぐにティアの身柄についてを苦々しく察する。
「彼女の言い分はあくまで個人的な事でダアトに神託の盾とは関係無いと一貫して主張していますが、それが個人的な事だという証拠は全く提示してはくれませんでした。故に連行という形を取りましたが、実の妹に場所も問わずに襲い掛かられる程の何かが貴方にあるのでしたら・・・貴方を手放しで信用するわけにはいきません。少なくとも貴方の疑いが晴れるまで」
「・・・成程、確かに今の私を簡単に信用出来ないという理由は分かりました。一先ずそこについては置いておくとして二つ目の理由はなんでしょうか?」
「簡単な事です・・・アッシュの討伐もしくは捕縛には、私達が向かわせていただくからです」
「っ、丞相が・・・?」
それで理由についてを更に詳しく話せばヴァンも重々しく納得するが、続いた二つ目の理由を聞いて意外そうに目を瞬かせる。
「師匠・・・こんな時に聞くのもなんですけど、そんなにコーメイが動くのが意外なんですか?ティアも何かダアトの偉い奴みたいに言ってたのは覚えてるんですけど、その割には顔も知らない様子だったからちょっとその辺りも含めて知りたいんですけど・・・」
「ルーク・・・まぁ、そうだな。丞相は地位は私より上の立場にあるが、あまり人前に出ての公務を行う事はない。このような言い方は丞相に失礼だが主に大詠師の補佐と言うか、裏方に近い仕事が主な為にな。だから兵としての経験が浅いティアが丞相の顔を知らぬのは無理からぬ事なんだが・・・丞相の言い方では自ら戦うというように聞こえたのですが、戦えるのですか?丞相は」
そんな時にルークが少し申し訳なさそうに疑問を口にしたことにヴァンは疑問に答えつつも、戦えるのかと心底からの疑問を孔明に向ける。それこそヴァン自身、孔明が戦えるなどと思っていなかった為に。
「えぇ、戦えますよ。と言っても前衛というわけではありませんが、彼らがいますのでその辺りに関しては問題ありません」
「ですが、アッシュが大人しく丞相の言うことを聞くとは思えませんし仮にも六神将。やはり私が行かねば・・・」
「そう言っていただける気持ちはありがたく思います・・・ですがここで一つ目の理由にも繋がりますが、まだ貴方を信用するわけにはいきません。ティア=グランツがどのような理由で貴方を襲ったのか、それがハッキリとしない以上は貴方の配下であるアッシュとも繋がりがあってこのようなことを起こしたのではないか・・・そして口裏を合わせてアッシュを逃がすつもりだったのではないかといった事をする疑いが少なからず私の中にあります」
「っ・・・つまり、今の私には信用がないというわけですか・・・」
「すみません・・・ですがどうしても信用してほしいと言うのなら、何故ティア=グランツが貴方を襲ったのか・・・せめてその心当たりだけでもお話しください。それが納得出来るだけの物であれば、貴方を連れてアッシュの元に向かえますが・・・」
「・・・そう言われましても、私には心当たりがありませんので・・・」
「そうですか・・・ではこちらで待機していてください、よろしいですね?」
「・・・はい、分かりました」
孔明は戦えることに関して肯定しつつ尚も食い下がってくるヴァンに厳しい言葉と共に襲われた理由を納得出来るようにと返すと、さしものヴァンでも返す言葉が見つからずに力なく頷くしか出来なかった。











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