女忍、深めて広める

「では私から改めてお聞きしますが、どうして貴女はそこまでして痛みを我慢していたのですか?」
「それは・・・痛みが来たその瞬間は訳が分からないけれどとにかく我慢しないといけないという気持ちになって、そしてその後で次第にこう思うようになっていったの・・・下手に私の体に起こったことを言えば私はここから外されてしまうのではないか、と・・・」
「ここから外されてしまう、ですか・・・正直に話すというように申し上げたのなら外されたくない理由についても言葉にしてもらいますよ。そのような言い方をすると言う事は、それなりの考えがあっての前提があるということですからね」
「・・・それは・・・」
そこからディストが話を主導すると理由についてを聞き、ちゃんと話すと言った為に内心を口にするティアだが更なる追求に答えにくそうに視線をさ迷わせる。言うと言いはしたが、そこまでは言いたくないという葛藤がやはりあるために。
「・・・・・・もし私の中での異変を口にしてしまったら、私がこの一行から外されて神託の盾からも除籍されることになると思ったからよ」
「神託の盾からの除籍、ですか・・・そこまで貴方は神託の盾に居続けたかったのですか?自分の体の異常を誰にも言わないようにして隠す形まで取って」
「・・・私が頑張らないと、兄さん達がやったことを払拭して取り返すことが出来ない・・・そう思ったからよ」
「払拭に取り返す、ですか・・・」
それでも葛藤の末に自身の考えをディストに視線を向けて口にするティアだが、その中身にディストは表情を覆い隠すように眼鏡に手を当て、周りのルーク達は程度の差はあれくのいちを除き、揃って苦い物を噛み締めるのを我慢するような表情を浮かべていた。
「・・・確かに兄さんやお祖父様達のやったことやその目的は、普通に考えれば許されない事だという物なのは分かるわ。けれど私がこれで尻込むような事になればユリアの血族として、兄さん達の家族としていけないと思ったのよ」
「・・・ユリアシティであのような話をした後で尚、貴女は彼らの名誉も回復させるつもりでそのようなことを考えたと言うのですか?」
「えぇ・・・兄さんにお祖父様の考えが全く別物であることは承知しているわ。けれど私にとって今でも譲れないことなの・・・その為には私が頑張らなければならないと思って・・・」
「だから彼らの為にも神託の盾を辞めさせられるような事は避けたかった、ということですか・・・」
ただティアは周りのそんな様子に気付けないままに話を進めていき二人の為にとの考えを真剣に口にし、ディストはその話を受け止めた上でくのいちに視線を向ける。
「一応は理由を聞きましたが、これでよろしいですか?」
「まぁいいよ。一応は私や旦那様に歯向かうような動機じゃないようだしね~。ただどうする?この診療所を貸してもらわないとディストも作業しづらいでしょ?」
「その点は大丈夫、ここは地元です・・・私の家を使います。皆さんはこちらでの用事が済まれましたら宿に向かわれてください。では行きますよ、ティア」
「えぇ、分かったわ」
それで伺いを立てて許可が出たことで自分の家を使うからと外へ行くというディストに、ティアは疑うことなく頷き外へと向かう。



・・・それで二人が外に出た瞬間、場にいたくのいち達は一斉に気が抜けてしまったように肩を落とした。









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