軍師、狭める

・・・ルークが全て悪い。孔明にそう言ったように認識した、いやさせられたアッシュは感じたことだろう。孔明の言うことに従えば問題はないだろうと。

勿論今までの経緯が経緯なだけに、アッシュは素直に態度でそれを示さないというか距離を取るような態度を崩しはしないだろう。だがここに来て今まで警戒対象だった相手がさも自分の事を現実的に考えて、救いの手を差し出してきた事がアッシュにとって何よりの救いとなった。

今までは孔明達も含め、周りには心から信頼や信用を向けることが出来ないとまるで野生の獣のような警戒心ばかりを向けてきた。孔明に選択を強いられたと感じたのもあってだ・・・だがそれが先程のやり取りから、ルークを悪にして全てを押し付けて始末出来ると錯覚してしまったのだ。丞相は多少なりにも信頼出来るし、ルークが全部悪いならキムラスカに戻っても問題はないのだと。

・・・だが孔明は別に特別にアッシュに対して親身になった訳ではないし、ましてや言っていないことも多々ある。大爆発の事が嘘であることもそうだが、もしルークがいなくなったと仮定して進むアッシュにとっての未来が全てが全て、アッシュに都合のいい世界にはならないということだ。



(今のアッシュの中ではルークが死んでキムラスカに戻るという未来に、明るい未来だけしかないと感じてるんだろう・・・だがそうはならんだろうことを丞相は敢えて口にはせず、ただキムラスカへ戻るようにと誘導した・・・これから先にどのような事が起きるかはこのグランコクマからでは詳しく知るよしもないが、アッシュにとっては良くない未来になるだろう。まぁそれをわざわざ本人に言うつもりもないがな)
それでピオニーはアッシュがいかな結末になろうが、どうでもいいといったように内心で考える。



・・・いかにインゴベルト達に戻るように求められているとは言え、アッシュがキムラスカに戻って何事もなくはいおしまいなどと平穏無事に済むわけがない。それはピオニーもそうだし、孔明もまた同様に考えているし話し合ってもいる。

それに孔明の話では今重要なのは、アッシュにキムラスカに戻ってもらうこともそうだがその行動を予測出来る物にすることだ。先程までのアッシュだったなら押さえ付けてはいたものの突発的に何かをしでかしかねない危険な部分があったが、今のアッシュなら余程の事が起こらなければまず突発的行動を取らないだろうとピオニーも見ていた。

・・・ピオニーからすれば別にアッシュは是が非でも助けたいと思うような存在ではないし、ましてや特別でなくとも目をかけるような存在ではない。通常の時にこういった関係でなく出会うならまだ気さくにだったりしていたかもしれないが、今は非常時であることもそうだし何より孔明という協力者に協力するのが重要なのだ。

これから先アッシュにとっていかに困難で、受け入れがたいことが待ち構えているか・・・ピオニーはただうっすらと予感するのみだった。アッシュが四苦八苦し、苦しむ姿があるだろうことを。









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