軍師、狭める

・・・先程の会話の流れに関しては孔明達とピオニー達の間で行われた打ち合わせの通りの出来事である。その中で大爆発という事象についてを説明したが、あれは大爆発という事象自体は確かに存在はしている。しかしその中身に関しては嘘の物だった。

大爆発という事象は簡単には言うならばレプリカ情報を抜かれた被験者が、その抜かれた情報を求めてレプリカの体を被験者が乗っ取るという物だ。そして知識や経験こそレプリカの人格に記憶から受け継ぎはするものの、被験者の人格をぶち壊すまで大きな影響を及ぼすような効果まではないとの推測がディストにジェイドも共通してある。

それなのにあぁまで大袈裟な事を孔明が口にしたのは、アッシュにルークを殺させるような事態を避けるためだ。ルークを守るという観点から見てもそうだが、大爆発が起きる可能性を避けるためでもあるし・・・何より、ルークを殺したという事実がもたらす物がアッシュに大爆発抜きでもどんな変化をもたらすのかが孔明にも予測がつけにくいのが厄介なのだ。

ルークを殺してアッシュがまともになると、そういった確証があるならまだ孔明もルークを殺す事に関して一考する事も有り得ただろう。しかし普通に考えて憎い相手を殺したから心を入れ換え、愛想よく孔明やインゴベルト達に接してくれるという風に都合よくいくわけはない。



・・・うまくいくならと、そういった希望だけで確証のないことを行うわけにはいかない。ましてや不安の方が大きい事象をただ信じるわけにはいかない。それほどにアッシュの状態は不安定としか言いようがなく、孔明達からすれば不安要素でしかなかった。

だからこそアッシュの考えや気持ちを誘導することに孔明は決めたのだ。大爆発の嘘の可能性についてをアッシュに述べてルークを迂闊に殺せないという状況を認識してもらい、その上で自分達がアッシュの事を分かっているのだと認識してもらう形でだ。

現にそういった風に思わせるための言は既にアッシュに言ってある。それは全てルークがいるからといったように言ったことだ。

この時にルークの事があったから中々本音が出にくかった部分があったことは確かだろうが、実際はキムラスカの事であったりナタリアの事であったり他にも様々な要素が絡んでいるからこそアッシュは思い悩んでいたことだろう。しかし孔明がさもルークが全ての原因だといったように言うばかりか、自分達がアッシュの為にもルークを殺す準備があると告げるとその言葉に乗るような形で・・・葛藤した後に、全てをアッシュはルークに押し付けた。今までの強がりを捨てるよう、戻りたいと口にする形でだ。



(ルークが全て悪い、だから自分は間違っていない・・・そういった考えに丞相にまんまとさせられた事に気付かないまま、丞相に全てを委ねるような流れにした・・・フォミクリーについては多少聞きかじった程度の知識が無いからそれは騙されて仕方無いにしても、あっさりと考えを翻すにも程がある・・・本当に今までの疑心に警戒心が何だったのかと言わんばかりにな。まぁこの辺りは丞相がうまかったというのもあるんだろうがな)
それでピオニーはアッシュに対する呆れを抱きつつ、孔明に対する賛辞の気持ちを抱いていた。そこまで正確に読みきった上で対処をするという手腕に。









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