軍師、狭める

「どういうことかといった表情をされていますが、貴方のレプリカであるルークが普通に産み出されてどこか劣化した部分が出来るレプリカと違い、完全同位体という劣化がないレプリカであることに関しては説明を受けていますね?」
「それは、受けてはいるが・・・それが何の関係がある・・・?」
「貴方が受けた説明はそれまでになるでしょうが、実はディストはその先に完全同位体であるからこそ起こり得る事象があると私に話してくれました。それは大爆発という事象です」
「・・・大爆発・・・?」
そんな表情について軽く口にした上で話を進めていく孔明の言葉の中、大爆発という聞き慣れない単語にアッシュは眉を寄せる。
「・・・大爆発という言葉から何か物理的に危うい事が起きると感じるかもしれませんが、そういった周りに被害を及ぼすものではありません。むしろ貴殿方二人の間でのみ起こることであり、周りに被害が及ぶことはないとのことです」
「だったら何が起こると言うのか、さっさと言いやがれ!」
「ではお答えしますが、完全同位体同士の存在は近い位置でどちらかが亡くなるような形になれば亡くなった側が今も生きている相手の音素に介入する形で、一つの存在に戻ろうとする性質が有り得るとのことです。その性質についてを大爆発と呼ぶらしくハッキリ絶対にこうなるとは確証がないとのことですが、そうなり得る可能性は十分に有り得るらしく、もしそうなった場合は生きていた側の性格に考え方が亡くなった側の影響を大いに受けて変わる可能性は極めて高い・・・とのことです」
「なっ・・・!?」
大爆発とは何か・・・それを丁寧に説明しようとする孔明に焦れて声を荒くするアッシュだったが、その詳しい中身に絶句した。
「そういう反応をするであろうことは予測出来ていましたし、貴方が先走ってルークを殺すような展開になるのを避けたかった・・・だから我々は貴方にそうさせないようにと気を配っていたのです、これまでの旅でね」
「う、嘘だ!デタラメを言うんじゃねぇ!」
「デタラメではありませんよ。丞相がおっしゃられたように大爆発が起きる可能性は無いとは絶対には言えません。それは私も保証します」
「な、何・・・テメェも、そんなことを言うってのか・・・!?」
また予測出来ていたと口にする孔明にアッシュはすぐに信じられないと口を開くが、ジェイドが間違いではないと口を挟んできた事に目を丸くする。お前もそう言うのかというように。
「・・・貴方も知っているでしょう。私がフォミクリー技術についての原案者であることは。そして私もまた大爆発については理論上有り得るものとして考えてはいましたが、だからこそ丞相の言われたように絶対に起こらない可能性も起こる可能性もどちらも否定は出来ません。何しろ完全同位体についてはそもそも私がフォミクリー技術についてを研究していた頃ですら夢の産物とすら思っていたものですし、ディスト自身も完全同位体の研究に関しては完璧に出来ているわけではないのは丞相のお話から想像は容易に出来ますからね・・・貴方が信じる信じないは勝手ではありますが、もし大爆発が起きてしまえばもう私やディストがいかに知恵を絞ろうと貴方とルークを元に戻す手段などありませんよ。例えて言うならミルクを入れて混ぜ合わせてしまったコーヒーを完全に混ざりあってない元の二つに分けて戻して見せろ、と言うような物です」
「・・・っ!」
ジェイドがそれがいかに嘘ではないかを強調するように話をしていき、最後の例についてを上げられた所でアッシュは息を詰まらせた。素人でもどんな困難な物か、分かりやすい例えであったこともあって。









.
11/16ページ
スキ