軍師、狭める

「アッシュ・・・少なくとも結論とは言わずとも、貴方の現時点での考えについて聞きたいと陛下が熱望されているのは分かるはずです。ならばここで戻らないと完全に決めていて断言出来るというならまだしも、少しでも戻ることを考えているか傾いているというならその旨をお伝えすることは重要です。今後貴方がキムラスカに戻るという考えを持っているのであれば、ピオニー陛下と良好な関係を結ぶという意味でも尚更にです」
「っ・・・くぅっ・・・!」
孔明はそんな姿に更に追撃とばかりに今ここで考えを明かす重要性を説くと、アッシュは答えようかどうかを非常に悩む様子を見せる。流石にここでマルクト皇帝を無視と言わずとも突き放すような真似をすればどうなるかを考えていると同時に、それでもまだ意地を張りたいとの考えの間で揺れるように。
「・・・アッシュ。貴方がそこまで頑なになる理由は、ルークがいるから・・・ですね?」
「っ、いきなり何を言いやがる・・・?」
「だから貴方がそこまでしてハッキリとした結論を口にしようとしない理由です・・・ここまで来てしまえばどちらに傾いているかだけでも明らかにすれば楽な筈なのに、それすらも口にしない。それはつまり、貴方の中でルークとの事をどうにか・・・直接的に言うなら、彼を殺してから色々と考えたい・・・そう考えているからではないかと感じたのですが、違いますか?」
「っ・・・・・・そう、だ・・・」
・・・それでもそこまで迷う理由は何か、それはルークではないのか。
核心を突くようにルークについての問い掛けを向ける孔明の言葉に、アッシュが極めて苦々しくも小さな声と共に確かに頷いた。周りの目がどのような物になっているかなど気付く事など出来ないままに。
「やはりそうでしたか・・・貴方の中ではルークがいること、それこそがあらゆる意味で貴方の考えの障害となっているのでしょう。自分が何をしてもそこにルークがいて、自分の邪魔になるという形でね」
「だ、だったら何だってんだ・・・それがテメェに何の関係がある・・・!?」
「ルークがいるからそういうことを考えられないと言うなら、発想の転換としてルークがもういなくなった後の事を考える形で発言してみてはいかがかと申し上げたいのです。そうすれば少しは考えやすいのではないかと思いましてね」
「・・・テメェの言い方は理屈としちゃ、分からねぇでもねぇ・・・だがその言い方は、あの屑の事を殺す事をテメェが考えてるように感じるが・・・」
「必要であればそうするつもりですよ。貴方がそう望めばの話ですがね」
「なっ・・・!?」
そんな様子にルークがいないならと仮定するような話し方をしていく孔明に訝しむような様子を浮かべるアッシュだが、ここに来てルークを殺す気はあると平然と言葉にされた事に絶句した。
「その反応からするに、貴方は私が彼の事を擁護すると言ったように考えていましたね?彼の方を貴方より優先しているというように感じる形で」
「ち、違うというのか・・・!?」
「別に私はどちらかを贔屓しているわけではありませんが、かといって貴殿方の関係についての決着を勝手に貴方の手でつけられることを危惧しているのです。そうなれば取り返しのつかない事態になる可能性があると、そうディストからお聞きしていますからね」
「ディスト、から・・・!?」
そうなった理由をあっさり口にしてから話をしていく孔明に、アッシュは混乱と言った様相を深めながらディストの名を呟く。何故そこでその名前が出るのかと。









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