軍師、狭める

・・・それで以降は休憩ということで孔明達はゆっくりした時間を過ごした。そして翌日、アッシュと共に孔明達は謁見の間へと呼び出された。



「さて・・・初めましてだな、丞相。こうして実際に顔を合わせるのは」
「はい。お初にお目にかかります、ピオニー陛下」
玉座に座りジェイドとフリングスを両脇につけながら初めてと挨拶するピオニーに、その前に立つ孔明も両脇のリグレットにシンクと共に頭を下げる・・・昨日一回会ったことなどなかったとばかりに自然な形でだ。そしてそんな風にするための対象であるアッシュは疑うこともなく、ただ頭を下げる事もなく平然とピオニーへと強い視線を向けていた。それがいかに傲慢なのかもそうだが・・・以降に自身に何が待ち受けているかなど考えることもなく。
「まずは礼を言わせてもらおう・・・そちらのおかげでキムラスカとの戦争を避けることが出来た。報告の手紙を受け取ってはいたが、感謝を伝えたい」
「いえ、こちらも戦争になるような事態など望んでいませんでしたし、大佐達の力添えがなければ果たしてうまくいっていたかどうかは分かりませんでした」
「ふむ・・・そう言ってくれるのはありがたいが、このままでは似たような事の繰り返しになるだろうから話を本題に移すが・・・そちらがこのグランコクマに来た目的はタルタロスの使用及び、譲渡の依頼だったな」
「はい、そうなります」
そのまま礼から話を進めていく中でピオニーが本題についてを切り出すと、孔明は間違いないと頷く。タルタロスの使用と譲渡と。
「これよりの我々の足としてもそうですが、ディストの話によれば障気を一時的にでも地表に押し出させない処置を施すにはタルタロスを用いることが最適との事です。詳しい理論などに関しては時間がかかりますので省かせていただきますが、ディストの話では後は少々の用意とタルタロスがあればそれを為す為の準備が整うとの事です」
「それが成功すれば何も対処せずにいれば崩れ落ちていくしかない外殻大地を崩さないままに魔界に下ろすことが出来る上に、一時的にでも障気に犯されることのない状況が出来るというわけか」
「はい・・・そこから先の事に関してはまだ成功してからになりますが、それでもそこまでに辿り着くにはタルタロスが必要になります。ですのでタルタロスの代金が必要だというなら用意は致しますので、譲渡していただけるとありがたいのですが・・・」
「金はいい。そのままタルタロスに関しては無償でそちらに譲ろう」
「よろしいのですか?そのようなことを申されて」
「構わんさ。ここでタルタロスの金がどうだこうだと時間を取るのは後々の事を考えればあまり良くないだろうし、タルタロス一隻で世界全体の安全をしばらく買えると言うなら安いもんだ。タルタロスはそちらの兵士と共にこのグランコクマにいるから、この後にでも早速使ってくれ」
「ありがとうございます、陛下」
そこからいかな用途でタルタロスが使うかに必要なのかを語っていく孔明にピオニーは反対する理由はないから譲るとあっさり言い切り、またリグレット達と共に頭を下げる。



・・・確かにタルタロスの事に関して話をするのは目的ではあった。しかしその話については既に昨日の内に済んでいる。今のこの話はあくまでアッシュに向けてのポーズでしかない・・・自分達が初めて話をしているといったように見せるための。

重要なのはこれからである・・・アッシュにとって避けられない、狭められて避けることを許されない選択を提示する時間は。









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