軍師、責める

「・・・身内だからと贔屓目になったり情がわくことはなんら不思議な事ではありません。ですがそれなら自分の懐の内に入れておくか、いっそ嫌われる程に突き放しておくべきだったのですよ。それを中途半端な距離感でティアに接する形・・・言ってしまえば兄としての顔でせめてものの事をしてやろうとリグレットを派遣したことが、貴方の秘密の一端を知られる事になるきっかけとなりティアがあのような頑迷な性格に考え方になってしまったのですからね」
「・・・いっそ嫌われる程に突き放す、ですか・・・そうしていたなら、ティアはまともになっていたでしょうか・・・」
「まともにと言うよりはユリアシティの教えに染まった上で、この外殻大地上に出てきたかどうかも怪しい状態になっていたというところでしょうね。ただそれでも貴方の邪魔をしでかすようなことはしなかったでしょうし、私もティアの事について色々と頭を悩ませるような事にはならなかったでしょうし、流石に騙し討ちのような形でパッセージリングに連れていくような事など考えませんでしたよ」
「・・・他のユリアシティの住民達のようにはなっていたが、ある意味では穏やかに生きることが出来ていたと言うわけですか・・・今更ながらに悔やまれますよ。貴方の事を見抜けなかったこと以上に、ティアを巻き込まないように徹底出来なかった事を・・・」
「「「「・・・」」」」
そこから孔明がどうするべきだったかにそうしていた場合の事を説明していくのだが、自嘲の笑みを浮かべるヴァンのその様子に周りの面々は何とも言いがたそうな様子になる。特にルークとアッシュの二人は師の初めて見る弱った姿の為、複雑そうである。
「・・・ティアが行動を起こしたと知った時からお聞きしたいと思っていたのですが、何故貴方は自らの元に彼女を置かなかったのですか?貴方が市長にユリアシティの住民に対して気を許していなかったのは分かっていますが、ならばこそティアが預言の達成が大事とするような考え方になるのを好まないと思ったのですが」
「・・・ユリアシティの考え方に染まるのが嫌だったのは否定はしません。ですが謡将という地位を得るため、ファブレに顔を売るため、裏で活動をするため・・・様々理由はありますが、色々と考えてティアに構う時間が無いと考えたからです。そしてティアに構うにしても、あの娘の考えを変えることは一朝一夕には出来ないと見ていましたし、ましてやホドや第七譜石の事を話せば誰かに漏らすことも有り得ると感じましたので・・・」
「今のティアのあの様子なら確実にそれらについては言っていたでしょうし、私もそう感じたからこそ先程の場で言ったのです・・・ただそう思ったならばこそ、尚一層突き放すように接するべきだと思いましたよ。今の話を聞いてね」
「・・・そこについては反論出来ませんね・・・最早今となっては・・・」
続いてどうしてティアを引き込まなかったのかの理由を聞くのだが、その理由に分かっていたならばこそと返すと心底からヴァンは落ち込んだように頭を下げる。
「・・・この後についてですが、貴方にはラルゴ達と共にしばらく牢に繋がれてもらいます。その上で貴方を外に出すのは先程言ったような事態になるか、全てが終わった後の始末をつける時になりますのでご了承を」
「・・・致し方ありませんな・・・最早私に発言権などないでしょうし、ティアについてはもう情けを望める段階をとっくに越えてしまっているのですからね・・・」
そしてもうヴァンにはどうにもさせる気はないと以後の処置を伝えると、諦めたようにうなだれながら返す。もう自分には妹の事も含めどうにも出来ないと、そう理解せざるを得なかった為に。









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