軍師、責める

「ですので貴方にとって残酷な事になるかとと申し上げたような手段を用います。その手段は・・・パッセージリングと言えば、分かるのではありませんか?」
「なっ・・・!?」
孔明はその手段が何なのかをパッセージと返すのだが、その答えにヴァンは衝撃を受けて唖然とする。
「・・・おい、パッセージリングが何だと言うんだ?ヴァンの奴は相当な衝撃を受けてやがるが・・・」
「詳細については後でお話ししますが、全てが終われば良くて神託の盾にいられないくらいの負担を負う事を彼女にしていただく予定です。そしてその行為はこれからの世界の為にも必要な事なのですが、それを担っていただくには彼女か謡将しかいません」
「・・・それはつまり、ユリアの血族でなければ出来ない事だと言うことですか?」
「そういうことです」
アッシュはその様子にどういうことかと聞くと孔明が後でと言いつつ話を進める中、ジェイドの確認の声に頷く。
「・・・もしや貴方はティアにパッセージリングの事について、言うつもりは・・・」
「えぇ、ありません。事前に知らせてその場に行かせようとしても、ティアの性格からして私を犠牲にするのかと言いごねるだろうこともそうですが、真意はどうあれ貴方と代わり代わりに動いて自身の負担の軽減を発案してそれを拒否すれば私の命を拒否するという可能性もあります。そうなれば色々と面倒な事になりますからね」
「・・・それを起こさないようにするには、何も知らせないことが手っ取り早いと言うわけですか・・・」
「えぇ。念のために先に釘を刺させていただきますが、貴方が身代わりになると言い出してもそれは受け入れません。もしそう言った事態になる時はティアが倒れてどうしようもない時だけです」
「っ!」
ヴァンはそこから孔明の考えについての予測を立てるが、肯定と共に返ってきたティアを助けるつもりは一切ないと断じる言葉に言葉を詰まらせる。
「・・・そこまでの危険性があるってのか?その、パッセージリングに関しての事がよ・・・」
「えぇ。現に謡将もパッセージリングに行って相当体に負担がかかって、ディストに診てもらったとのことです。現在も相当な負荷が体にかかっているのを気力でなんとかしているとの事らしいですよ」
「えっ・・・そんな風には見えないけど、そこまでキツいってのか・・・?」
そこにルークがそこまでかと疑問の言葉を向けてきた為、ヴァンの状態についてを孔明が口にすると他の面々もヴァンに注目する。体調が優れていないようには見えないというように。
「・・・フッ。ばらされてしまっては仕方無いが、確かに私の体は良好と呼べるような状態ではない・・・だからこそティアに同じような事をさせたくはないというのが私の気持ちなのだが・・・」
「そうして同じようになってほしくないからと、何も知らせずただ遠ざけるだけ遠ざけた結果が今のあのティア=グランツなのですが?」
「うっ・・・!」
そんな視線にヴァンはさも何もないとばかりの笑みを浮かべた後にティアへの気持ちを寂しげに口にするが、孔明が温度を感じさせない表情で盛大な皮肉を向けると今までで一番痛々しいと言ったようにうめき声を上げた。孔明にそこまでさせたティアの愚鈍さはヴァンのせいと、まざまざと突き付けられた為に。









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