軍師、焔達と会う

「・・・私からも一つよろしいですか、丞相?」
「何でしょうか?」
そんな時に今度はジェイドから質問をしたいとの声が向けられる。
「貴方がこのカイツールに来たタイミングについて疑問に思っていたのですが・・・もしや、謡将が我々と離れた時を見計らって動いたのですか?」
「念の為に言っておきますが、あくまで偶然ですよ。本来でしたら謡将も交えた上で話をしようかと考えていたのですが、先に港の方に単独で向かわれたのでこちらに合流させていただいたのです。謡将がいなくなったことは話をする上では都合がよかったことは否定はしませんがね。謡将がいては話がこうもすんなりと進むとは思っていませんでしたので」
「謡将がいたら話が進まないと予想していたのですか?」
「えぇ。謡将にも話は聞きたいとは思ってはいますがこういった事情聴取などでの場合、基本的に話を聞くべき対象の人間を同じ場に同席させることはあまり望まれません。対象者同士の争いに庇いあいといった事態を避けるためにもです・・・そういった意味で謡将がいたなら彼女をなだめつつ、彼女から今までの話の言葉を引き出すのは難しい状況に謡将はしていたでしょうね」
「・・・おそらくそうでしたでしょうね。先程こちらで謡将と会話をしましたが、端から見ていたらティアの一方的な怒りをあっさり押さえた穏やかな兄といった構図になっていました。もしこの場に謡将がいたなら、まず丞相の言っていたような事になったでしょう」
そんなジェイドが口にした疑問とは合流したタイミングについてだが、偶然だと言った上でヴァンがいた時の事をシミュレートする孔明に納得する。まずティアは言いくるめられていたのは間違いないだろうと。
「・・・ではコーメイは、この後ヴァンにも事情を聞きに行こうと言うんですか?ティアのやったことについて・・・」
「はい、そうなりますが・・・その件で道中の供と同時に、ティア=グランツの連行の許可をいただけないでしょうか?」
「っ!?」
「連行、ですか・・・」
続いたイオンの言葉に孔明は自身の要望を告げるが、ティアは驚愕に目を見開きイオンは考え込むような様子になる。
「はい。導師に皆さんがティア=グランツと道中でどのような関係を築いたかは分かりませんが、私は彼女を信用など出来ません。むしろこの話を聞いた以上彼女が大人しくキムラスカに行くことを拒み、逃げ出そうとする可能性についてを危惧しています」
「っ!・・・そ、そんなことわ、私は・・・」
「そのように動揺している様子では説得力はありませんよ・・・よろしいですか、導師に皆さん?」
孔明はそこからティアが逃げ出す可能性についてを切り出し当人が否定を返そうとするが、全く毅然とした様子を作れずにいる様子に呆れながらイオン達に連れていって大丈夫かと問い掛ける。
「・・・私は構いませんよ。そういう事情にマルクトの人間である私が首を突っ込むことではありませんから」
「・・・本当なら庇いたいところじゃあるが、そういった事情じゃな・・・」
「・・・ま、そういうことなら俺はそれで別にいいぜ。お前の話聞くとそうすることが正しいことだと思ったし、俺の気持ちとしてもそうしてくれりゃ気も収まるしな」
「あっしが旦那様の言うことを聞かないなんてあるわけありやせんって」
「私もお父さんの言うことに反対はしません。むしろ当然の事だと思いますから」
「・・・っ!」
そしてジェイドを始めとして各々が孔明の意見に賛同した事にティアは顔色を青くし、イオンの方へ視線を向ける。最期の希望を見るかのような目で。
「・・・分かりました。道中の供にティアの連行の許可を出します。話を聞くとそうするべきだと僕も思いましたから」
「!!」
・・・だがイオンが出した結論はティアにとって無情な物であった。自身を助けはしないと強く意志を込めた瞳での。










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