軍師、責める

「私が二人・・・いや、正確には二人の母親もいたがユリアシティに来てすぐに亡くなったのだが、その時に私が二人を引き取ることになったのだ。ホドから行き場の無くなった二人の為にもとな」
「じ、じゃあ・・・本当に私達とお祖父様の間には血の繋がりは・・・!?」
「だからないと言っただろう・・・と言っても悲嘆に暮れる必要などない。ホドの崩落に関してはあれも預言に詠まれた物だが、そこには私の本名であるヴァンデスデルカ・・・古代イスパニア語で栄光を掴む者という意味であることは知っているだろうが、私がホドを滅ぼすという中身があったことと私がその当人であることを知っていたのだぞ」
「「「「なっ!?」」」」
市長が当時の事を思い出すように話をしていきティアがその事実に泣きそうな声と表情を浮かべるが、ヴァンが泣く必要がないと明らかにした事実にティアだけでなく孔明達を除いたルーク達が一気に驚愕した・・・ホドの崩落がヴァンが理由だという、まさかの事実を今知ったことに。
「勿論言っておくが、私が自分でそうしたいと思って起こした事ではない。厳密に言えば私を使って疑似超振動をマルクトの技術者達が無理矢理に起こしたことから、ホドはパッセージリングが消滅して魔界に崩落することになったのだ」
「そんな、事をマルクトが・・・!?」
「いえ、それは本当です・・・当時の私もその計画については知っていました。ホドの状況を打開するにはこうするしかないと。ただそれがまさか謡将であることもそうですが、預言にそんなことが詠まれていたとは・・・」
「大佐・・・」
ただ一応の自己弁護をしつつもマルクトが行ったことと平然と明かすとフリングスが唖然とするが、ジェイドが表情を珍しく苦々しげに歪ませ肯定を返す様に嘘ではないことを感じ取り呟く。
「フッ・・・貴方の研究については私の計画に役立てさせてはもらいましたが、貴方の事については正直な気持ちを明かすなら・・・憎いとすら思っていました。ホドを消し、私達を殺しかけた貴方の事を」
「・・・」
「・・・何も返す言葉はありませんか。まぁいいでしょう。今の話はあくまでついでに出てきたことです」
その様子を見て隠すこともなく嘲笑を浮かべつつ憎しみを語るヴァンにジェイドはただ視線を背けて黙るばかりで、つまらないといったように話を戻すと言う。
「そんなマルクトが実際に私を用いてその疑似超振動を起こした事によりホドを支えていたパッセージリングは消滅し、私に母と生まれて間もないティアは魔界に落ちていくことになったがユリアの譜歌を歌い、何とか自分達だけは足場を保つことが出来た状況で魔界に降り立ち運よくユリアシティに辿り着いた。まぁそれも純粋な運などと言えるかそこについては論じずに話を進めるが、そのユリアシティで出会ったのが市長だ」
「じゃあ、そこでお祖父様が私達を引き取ると・・・?」
「その当時ティアが幼児であることもそうだが、母は体調を著しく崩していて私一人ではどうすることも出来なかったし、母が市長に私の知らぬ間に交渉をしてくれたのかもしれんが・・・それから間をさして空けることなく我々を引き取るというように言い出し、母はそこからあまり長く生きることが出来ずに息を引き取ったのだ。そして我々二人は市長の孫という立場でユリアシティに住むことになる」
「・・・それなら血は繋がってはなくても、お祖父様を恨む事は・・・」
「この期に及んでまだこの男を善人と信じたいのか、ティア?・・・今言っただろう、ホドが落ちることと私が原因になると預言に詠まれていたと。それを知っていてホドの消滅を止めもせず、私の事を知ったというのに何も知らないといったように迎え入れたばかりか・・・私が神託の盾で地位を得て敬虔なローレライ教団の人間だと感じたら、話が長くなるから要約するとホドの事は実は知っていたがお前が気にしていないようだから事実を知らせて預言の達成の為の人員として認めて預言の中身を教える・・・と平然と言ってきたのだぞ?」
「っ!?」
「・・・っ!」
そこからいかな流れで自分達がユリアシティに行って市長に引き取られたかを語るヴァンに、ティアが市長への擁護の言葉をかけようとするがそんな必要ないとばかりに自身が受けた仕打ちを明かされて絶句し、市長もたまらず視線を背けた。あくまで落ち着いたような口調で話してこそいるが、その内にある市長への負の念がいかに強いのかを感じさせるヴァンの様子に。









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