軍師、責める

「そういうわけですので謡将について話をすることは決定事項になりますが、付いてきたくないと言うのであればこちらで待機していただいて構いません。その場には謡将も同席していただく予定ですので」
「兄さんもっ!?」
「こういった場合において効果的なのは当人と顔合わせをして直に話をしてもらうことです。無論謡将に下手な行動をさせないように厳重な警戒体制を取らせてはいただきますが、その場に居たくないというのであればこちらで待機していただいて構いませんよ。色々と貴女にとって聞きたくないだろう事が出てくるでしょうし、お祖父様と謡将のやり取りが穏便に済むと考えているようでしたら場にいることはお薦めはしません」
「っ・・・!」
孔明がそんなヴァンの内情を踏まえてヴァンを連れていく事と祖父の対面の場に来なくてもいいと言うと、冷や汗を流しながら体を震えさせる。どう考えても肉親の久しぶりの再会の心暖まる場になるわけないどころか、真逆の修羅場になる姿しか想像出来ない孔明の口振りに二人の事が好きなティアからしてみたら到底見たくない光景な為に。
「・・・とりあえずはティアもそうですが、他の方々も船旅でお疲れでしょう。私と妻にリグレットはトリトハイム殿とダアトの詳細な状況について話をしたいので、ディスト達に部屋を案内させますから旅の疲れをゆるりと癒されてください。ただティア・・・一応貴女の肉親の方々に関することですから今回は選ばせて差し上げますが、無理をした選択はしないようにお願いします。明日になればまたこの部屋に集まるようにしますのでその時に貴女がどのように判断をしたか、お聞きします」
「・・・はい、分かりました・・・」
そして一先ずは場を終わらせると言った後にティアへと考えるように孔明が言うと、今まで以上に重く暗い表情を浮かべながら頷いた。



・・・それでルーク達が部屋から出たのを見送った所で、トリトハイムが孔明に視線を向ける。
「・・・よろしいのですか?報告の手紙である程度ティア=グランツの事については知ってはいますが、悩みはしても結局最後は同行するとの結論を出すでしょう。ならばいっそバチカルに同行させないようにしたようにすればよろしかったのでは?」
「そうしてもいいと思いはしましたが、彼女の考え方からしてユリアシティで祖父と兄の一悶着を見たくないという気持ちだけで逃げるような事は許されないと、待機するように言ったとしても勝手に場に突撃してくるか無理矢理に付いてくるのは明白です。となれば単に止めることも命令を下すようなことをしてもあまり意味があるとは言えません・・・でしたらいっそ彼女の行動を覚悟した上で連れていった方がいいと私は思っています。後々に乱入されたと考えると、どういった話をしているかのその時期と彼女の発言次第では最悪な結果を招きかねません」
「発言次第とは、どのような発言をすると言うのですか・・・?」
「考えられるのは自分がいかに兄の事を考えて動いてきたのかといったような悲劇的に振る舞う言葉に私が減刑の為に擁護する用意があるといった言葉ですが、謡将がそういった言葉に自身を刺した時の事についてを切り出すことです。それが出てくれば市長は確実に反応するでしょう・・・何故自分にそれを言わなかったのか、そうしておけばヴァンの事を止められただろうと」
「・・・そう市長が言うのは、ティア=グランツが謡将を刺した理由というか経緯を知らないから・・・ということですか?」
「えぇ。もし市長が彼女が謡将を刺した理由を知っていたなら、そもそもグランツ兄妹がこれまで活動出来ていたかも怪しくなっていたでしょう。まぁ謡将が黙ってそういった仕打ちを黙って受け入れるとは思いませんが・・・そこは置いておくにしても、まず騒動になることは避けられません」
「むぅ・・・そんなことになればユリアシティの方々に理解を求めるどころの話ではありませんね・・・」
それで出てきたのはやはりティアを連れていくことへの拒否感が強い疑問の声だが、孔明とやり取りをしていく内にトリトハイムも納得していく。ティアに乱入されることの危険性は確かに見過ごせないと。









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